忍者ブログ

リリースコンテナ第3倉庫



Home > ブログ > > [PR] Home > ブログ > 未選択 > 東北大など、ラット軟組織内における多層カーボンナノチューブの長期間生体持続性を評価

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

東北大など、ラット軟組織内における多層カーボンナノチューブの長期間生体持続性を評価

ラット軟組織内における多層カーボンナノチューブの
長期間生体持続性を評価



【研究概要】
 東北大学大学院環境科学研究科 佐藤義倫准教授は、北海道大学大学院歯学研究科、株式会社 日立ハイテクノロジーズ、株式会社 堀場製作所、独立行政法人 産業技術総合研究所、ブルカー・ダルトニクス株式会社、ネッチ・ジャパン株式会社との共同研究において、ラット胸部軟組織に埋入した絡み形状を持つ酸素含有官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基)修飾多層カーボンナノチューブ(tangled oxidized multi-walled carbon nanotubes:t-ox-MWCNTs)の構造を、2年間にわたって透過型電子顕微鏡、ラマン散乱分光法を用いて評価しました。その結果、埋入2年後、マクロファージ内のライソゾームにある一部のt-ox-MWCNTsではナノチューブの構造が分解されているが、細胞間隙(マクロファージ外)にあるt-ox-MWCNTsでは、1週、2年後とも、埋入前のナノチューブの構造とほぼ変化がなく、マクロファージに貪食されず、ナノチューブの構造が壊れないことを明らかにしました。
 生体外・生体内実験において、カルボキシル基修飾されている単層カーボンナノチューブや多層カーボンナノチューブがマクロファージや好中球などの貪食細胞中のライソゾーム内で生分解されることが知られていましたが、軟組織のマクロファージ内外でのカーボンナノチューブの長期間構造安定性は調べられていませんでした。この研究成果によって、カーボンナノチューブの生体材料は軟組織内で良好な生体適合性を持ち、カーボンナノチューブが分解せずに生体材料としての機能を保つことができるため、より軽量で強度のあるカーボンナノチューブを混合した生体材料の人工関節材や骨材への利用が期待されます。
 本成果は、8月28日付でNature Publishing Groupが発行しているオープンアクセスジャーナル誌「Scientific Reports」に掲載されています。


【研究背景と経緯】
 カーボンナノチューブ(carbon nanotubes:CNTs)はドラックデリバリーシステムのキャリア、細胞培養のスキャホールド、人工関節・骨などの生体材料として注目されており、これらの応用には、生体内でのCNTsの長期間の構造安定性および生体適合性が重要な要素となります。これまで、生体外・生体内実験において、カルボキシル基修飾されている単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotubes:SWCNTs)や多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotubes:MWCNTs)が、マクロファージや好中球などの貪食細胞中のライソゾーム内で生分解されることが知られていましたが、長期間の生体内でのCNTsの構造安定性、またマクロファージ内外でのCNTsの構造安定性は調べられていませんでした。このことを明らかにするために、2年間にわたり、ラット胸部軟組織に埋入した絡み形状を持つ酸素含有官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基)修飾多層カーボンナノチューブ(tangled oxidized multi-walled carbon nanotubes:t-ox-MWCNTs)の構造を透過型電子顕微鏡、ラマン散乱分光法を用いて評価しました。また光学顕微鏡を用いて組織観察を行い、t-ox-MWCNTsに対する細胞組織応答に関しても調べました。


【研究内容】
 埋入1週間後では、t-ox-MWCNTs(約5μm以上)は細胞間隙に存在し、ナノチューブ周囲に軽度の炎症反応を伴う肉芽組織が観察されました。埋入1年間後では、肉芽種性炎の状態を呈しており、大きな塊のt-ox-MWCNTsでは、ナノチューブの周囲の周りにマクロファージや異物巨細胞などの貪食細胞が数多く観察されました。これは、t-ox-MWCNTsの塊が大きすぎて、貪食細胞が塊を取りこむことができなかったためと考えられます。しかし、2年後には炎症が収束し、基質化が認められていることから、本実験で使用した親水性MWCNTsは生体適合性が高いと言えます。
 透過型電子顕微鏡、ラマン散乱分光法の結果から、軟組織内のマクロファージ内において、1週後では埋入前のt-ox-MWCNTsの構造とほぼ変化はありませんでしたが、2年後では一部のt-ox-MWCNTs表面の構造が乱れており、分解されていることがわかりました。この結果は、これまで報告されているマクロファージ内でナノチューブが生分解するという報告と一致する結果となりました。一方、細胞間隙にあるt-ox-MWCNTsでは、1週、2年後とも、埋入前のナノチューブの構造とほぼ変化がなく、マクロファージに貪食されて、ナノチューブ構造が壊れることもありませんでした。これらの結果から、親水性MWCNTsを使用した生体材料は軟組織内で良好な生体適合性を持ち、ナノチューブが生分解しないため、生体材料としての機能は保つことができると言えます。今後は、生体材料への実用化に向けて生化学データなどに関しても調べていく予定です。


【研究の展望】
 本結果から、親水性MWCNTsは軟組織内で安定で、良好な生体適合性を持つことが判明しました。今後は、親水性MWCNTsを使用した人工関節材や骨材などの軽量で強度のあるCNTs複合生体材料の開発とその利用が期待されます。


【発表論文】
 発表雑誌:Scientific Reports誌(Nature Publishing Groupのオープンアクセスジャーナル誌)
 発表論文名:Long-term biopersistence of tangled oxidized carbon nanotubes inside and outside macrophages in rat subcutaneous tissue
 和文題目:長期間によるラット軟組織内のマクロファージ内外での絡み形状を持つ酸素含有官能基修飾多層カーボンナノチューブの生体持続性
 著者名:Yoshinori Sato,Atsuro Yokoyama,Yoshinobu Nodasaka,Takao Kohgo,Kenichi Motomiya,Hiroaki Matsumoto,Eiko Nakazawa,Tomoko Numata,Minfang Zhang,Masako Yudasaka,Hideyuki Hara,Rikita Araki,Osamu Tsukamoto,Hiroaki Saito,Takeo Kamino,Fumio Watari,Kazuyuki Tohji
 雑誌URL:http://www.nature.com/scientificreports

PR

Comment0 Comment

Comment Form

  • お名前name
  • タイトルtitle
  • メールアドレスmail address
  • URLurl
  • コメントcomment
  • パスワードpassword