忍者ブログ

リリースコンテナ第3倉庫



Home > ブログ > > [PR] Home > ブログ > 未選択 > 東北大など、新しい熱処理プロセスによる結晶粒の異常成長現象を発見

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

東北大など、新しい熱処理プロセスによる結晶粒の異常成長現象を発見

新しい熱処理プロセスによる結晶粒の異常成長現象を発見
-形状記憶合金の大型部材への適用が可能に



 東北大学大学院工学研究科金属フロンティア工学専攻の大森俊洋助教、貝沼亮介教授らの研究グループは、新しい熱処理プロセスによる結晶粒の異常成長現象を見出しました。
  銅系形状記憶合金を用い、900℃以下の温度域で冷却・加熱のサイクル熱処理を行うことにより、数センチメートルの結晶粒を得ることに成功しました。これ により、数センチメートルの断面サイズ(例えば、棒材では直径)を有する部材として銅系形状記憶合金を利用することが可能になり、工業製品などへの応用が 期待できます。
 本研究の成果はJST 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)における採択課題「新型銅系超弾性合金の大断面建築部材および外反母趾矯正装具への応用展開」(国立大学法人東北大学、株式会社古河テクノマテリアル)の一環として得られたものです。
 この成果は2013年9月27日付のアメリカ科学振興協会発行の学術雑誌サイエンス(注1)に掲載されます。


 本成果は、以下の事業・研究開発課題によって得られました。
  研究成果展開事業(研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP))シーズ育成タイプ
   研究課題名:「新型銅系超弾性合金の大断面建築部材および外反母趾矯正装具への応用展開」
   研究者:貝沼 亮介(東北大学大学院工学研究科 教授)
   企業:株式会社古河テクノマテリアル
   研究期間:平成23年11月~平成27年10月
 JSTはこのプログラムのシーズ育成タイプで、顕在化したシーズの実用性検証のため、中核技術の構築を目指した本格的な産学共同研究開発を支援しています。


1.研究の背景
  通常、金属材料は原子が周期的に配列した結晶であり、方位の異なる多数の結晶粒からなる集合体(多結晶体)です。結晶粒の境界面、すなわち、結晶粒界はエ ネルギーが高く不安定なため、原子の移動が可能な高温では、材料内部における結晶粒界の割合を減らすために、ゆっくりとした粒界の移動による結晶粒の粗大 化が起こります。しかし通常の結晶粒成長は、粒径がサブミリ(0.1mm)程度に達すると著しく遅延することが知られています。
 最近、我々は従 来使用されている合金系(TiNi)に比べ格段に製造しやすい新型銅系形状記憶合金(注2)を開発し、その超弾性特性を利用した巻き爪矯正器具(注3)を 商品化しました。本銅合金の超弾性特性は、材料のサイズに対する結晶粒の大きさが大きいほど優れた性質を示すため、数センチもの大型部材への適用を考える 場合には、結晶粒もそのレベルまで大きくする必要があります。しかし、高温保持による通常の結晶粒成長法では限界があり、短時間で簡単に結晶粒を粗大化さ せる手法が切望されていました。


2.研究成果の概要
 このような背景の中、東北大学の研究グループは、銅系形状記憶合金 の結晶粒成長に関する研究を行い、約900℃以下温度域において冷却と加熱のサイクル熱処理を行うことで結晶粒成長速度が著しく速くなる異常粒成長現象 (注4)が起こることを見出しました。この手法を用いることで、通常の結晶粒径より1~2桁程大きい数センチメートルもの結晶粒径を得ることに成功しまし た。写真1は、直径2cmの棒を結晶粒が貫通しており、このサイズの材料においても良好な超弾性が得られることを確認しています。


3.研究成果の意義
  今回の成果により、従来、約1ミリメートル以下の断面サイズに限られていた銅系形状記憶合金の用途を、最大で数センチメートルの断面サイズに拡大すること が可能になります。今後、量産化プロセスを確立することで、従来、適用が困難であった建造物の制震構造用部材をはじめとする、センチメートルレベルの大型 部材への適用が期待できます。
 また、従来、液体状態の金属を特別な条件で凝固させたり、加工熱処理を与えたりすることで材料を単結晶(注5)に する技術がありますが、製造コストや扱える試料形状等の制約により特殊な用途での利用にとどまっています。今回の手法は、通常のプロセスを用いて成型した 部材に対しても熱処理を施すだけで巨大結晶粒が得られるため、大量生産にも適した実用的なプロセスと言えます。本プロセスは形状記憶合金に限らず他の合金 へも適用できると考えられ、単結晶を作製する新しいプロセスとして幅広い利用が期待されます。


 (注1)アメリカ科学振興協会(AAAS)の発行している学術雑誌。http://www.sciencemag.jp/
 (注2)バネの様に8%にも及ぶ弾性的な機械特性(超弾性)を示す銅-アルミニウム-マンガン系合金。本合金は、1994年に東北大学で開発された。
 (注3)足親指の巻き爪を矯正するためのクリップ。2011年よりレキット・ベンキーザー・ジャパンからドクターショールブランドで発売中。http://drscholls.jp/makizume/top.html
 (注4)ある特定の結晶粒が回りの粒を飲み込みながら異常成長する現象。
 (注5)1結晶粒のみからなる結晶粒界の存在しない材料。

PR

Comment0 Comment

Comment Form

  • お名前name
  • タイトルtitle
  • メールアドレスmail address
  • URLurl
  • コメントcomment
  • パスワードpassword