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東北大など、2つの生体防御機構の連携をがん細胞が増殖に利用していることを解明

二つの主要な生体防御機構が連携するしくみを発見
~このしくみを利用してがん細胞が増殖~



 東北大学大学院医学系研究科医化学分野 山本雅之 教授らは、(公財)東京都医学総合研究所の一村義信 研究員、小松雅明 副参事研究員らとの共同研究において、二つの生体防御機構(オートファジー(*1)とKeap1-Nrf2経路(*2))がp62たんぱく質のリン酸化を介して連動していること、この機構をがん細胞が自身の増殖に利用していることを明らかにしました。
 この発見により、p62を標的とした化合物が新しい抗がん剤の創薬候補になることが期待されます。
 なお、この研究は文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究『オートファジーの集学的研究 分子基盤から疾患まで』の一環として実施されているものです。
 この研究成果は、米国科学雑誌「MOLECULAR CELL」の9月5日(米国東部時間)付オンライン版で発表されます。

1 研究の背景
 オートファジーは細胞質に出現した構造体が伸長して細胞質成分を取り囲んだオートファゴソームが形成される過程と、生じたオートファゴソームがリソソームと融合し内容物を消化する二つの過程から構成されています(参考図1)。オートファジーは機能を失った異常ミトコンドリアや細胞内に侵入した細菌を排除し、細胞の恒常性維持を担っています。一方、細胞がストレスに曝されると、Keap1がセンサーとして働き転写因子Nrf2が活性化され、抗酸化たんぱく質や抗炎症性酵素の遺伝子発現が誘導され、細胞は保護されます。オートファジーもKeap1-Nrf2システムも主要な生体防御機構として働いているが、両システムの接点は不明のままでした。

2 研究の概要
 p62たんぱく質はストレスにより細胞内に生じた異常たんぱく質凝集体や異常ミトコンドリア、さらに細胞内に侵入した細菌を認識し、それらをオートファゴソームに輸送する受容体であると提唱されています。
 今回、小松副参事研究員らは、p62が異常たんぱく質凝集体、異常ミトコンドリアや細胞内侵入細菌に集積するとリン酸化を受け、その結果p62とKeap1との結合が著しく増強され、Nrf2が活性化することを見出しました。つまり、オートファジーとKeap1-Nrf2経路がp62のリン酸化を介して連動していることを発見しました(参考図2)。正常な細胞においてはp62のリン酸化はストレス誘導時のみ観察されましたが、肝細胞がん細胞株や肝細胞がん患者組織においては恒常的にp62がリン酸化され、Nrf2が持続的に活性化されていました。重要なことに、肝がん細胞におけるp62のリン酸化を抑制すると、がんの増殖が著しく抑制されました(参考図3)。このことは、p62のリン酸化やp62とKeap1との結合を標的とした化合物が肝細胞がんの新しい創薬候補になり得ることを意味します。

3 今後の展望
 本研究から、主要なストレス応答機構が連動し細胞を守るしくみが明らかになりました。さらに、本機構をがん細胞が生存戦略に利用していることを発見しました。したがって、p62のリン酸化やp62とKeap1との結合を標的とした化合物が新しい抗がん剤の創薬候補になることが期待されます。現在、創薬オープンイノベーションセンター保有の化合物を用い化合物スクリーニングを行っています。

【用語解説】
 *1 オートファジー:
 栄養飢餓に応じた自己たんぱく質分解を介したアミノ酸供給の一方、細胞内に生じた毒性のある異常構造体や細胞内に侵入した細菌を積極的に分解し細胞の恒常性を維持する。オートファジーの異常は、神経変性疾患や腫瘍形成を引き起こします。

 *2 Keap1-Nrf2制御システム:
 ストレスに応答して、生体防御システムを活性化するしくみ。Keap1はストレスを感知するセンサーとして働き、Nrf2は転写因子として生体防御酵素群の遺伝子発現を誘導する。通常の環境においては、Keap1はNrf2を分解に導く一方、細胞がストレスに曝されると、Keap1がセンサーとして働き、Nrf2が活性化し、生体防御遺伝子群の遺伝子発現を誘導する。Keap1-Nrf2の異常はヒト肺がん、胆嚢がん、そして頭頸部がんにおいて確認されています。

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