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理化学研究所、多次元NMR法によるリグノセルロースの立体構造評価手法を構築

多次元NMR法によるリグノセルロースの立体構造評価手法を構築
-バイオマスを低分子化することなく高分子のままでの利用を目指して-


<ポイント>
 ・解析の困難な高分子混合物「リグノセルロース」を多次元NMR法で解析
 ・多次元NMR法の多彩なシグナル分離手段を駆使し119シグナルを同定
 ・固体試料でのNMR法と組み合わせることで超分子構造を理解


<要旨>
 理化学研究所(理研、野依良治理事長)は、植物の細胞壁を構成する「リグノセルロース[1]」の構造を核磁気共鳴(NMR)法[2]を用いて評価する手法を構築しました。植物の幹や茎など食用に適さないバイオマス資源からエタノールなどの有用資源を生産する有力な手段となります。これは、理研環境資源科学研究センター(篠崎一雄センター長)環境代謝分析研究チームの菊地淳チームリーダーと小松功典大学院生リサーチ・アソシエイトによる研究成果です。

 リグノセルロースは、陸上に最も豊富に存在するバイオマスで、多糖のセルロースやヘミセルロースと、高分子化合物のリグニンで形成された高次構造かつ難溶性の高分子混合物です。その構造を解明できればバイオマス利用に有用な知識が得られると期待されています。しかし、構造の複雑さと溶媒への溶けにくさが、構造解析を困難にしています。

 研究チームは、炭素の安定同位体[3]「13C(*)」で標識したリグノセルロースを、タンパク質など生体高分子の構造解析に用いる多次元NMR法で解析しました。その結果、新規を含む119シグナルを網羅的に同定することに成功しました。さらに、今回得られたシグナルの周波数の違いである化学シフト[4]を、固体試料のまま計測する固体NMR法における化学シフトと比較することで、溶液および固体状態での空間的な原子の配置(配座)の違いを検出することができました。この配座の違いは構成成分の物性の違いを反映しており、今後のバイオマス利用に非常に有用な知見といえます。

 *「13C」の正式表記は、添付の関連資料を参照


 今回開発した技術は、さまざまな植物試料に適用できるほか、本研究で取得した化学シフトをデータベース化して利用することで簡便に植物細胞壁の組成情報を得ることができます。また、固体NMR法などの周辺技術と組み合わせることで、さらなるリグノセルロースの構造の理解につながると期待できます。

 本研究成果は、米国の科学雑誌『Analytical Chemistry』(9月8日オンライン版)に掲載されました。


<背景>
 トウモロコシやサトウキビを栽培し、その可食部からエタノールなどの有用物質を生産する「バイオリファイナリー[5]」がすでに実用化されています。一方、近年、植物の幹、茎、葉など食用に適さないバイオマス資源から有用物質を生産する「次世代バイオリファイナリー」への転換が待望されています。その実現には、植物の細胞壁を構成するリグノセルロースの構造を解明することが必要です。しかし、リグノセルロースは、主に多糖であるセルロース、ヘミセルロースと高分子化合物のリグニンが混合し、高次構造を形成した難溶性の高分子混合物であり、その構造を解析する手法は確立していません。

 リグノセルロースの構造を理解するには、各成分に分離することなく混合物のまま解析する必要があります。それは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンは異なる物性を持ちますが、リグノセルロース全体としての物性は、各成分が混ざり合った高分子混合物として現れるからです。

 既存の手法では、基本的に各成分を単離・精製して解析します。一方、近年盛んなオミックス[6]研究では、各成分を単離・精製することなく網羅的に解析します。例えば、メタボロミクス[6]研究では質量分析法や核磁気共鳴(NMR)法を用いて代謝物を網羅的に解析します。ただ、リグノセルロースなどの高分子混合物は、分子量が大きく、また難溶性であることから解析が困難でした。しかし、NMR法には、X線解析とは違い結晶化の必要がなく、また溶液から固体まで幅広い状態の試料を解析できるといった利点があります。したがって、NMR法は結晶性のセルロースや非結晶性のヘミセルロース、リグニンから構成されるリグノセルロースの構造をそのまま計測するのに適しています。そこで研究チームは、溶液NMR法と固体NMR法において多次元NMRスペクトルを計測し、リグノセルロースを各成分に分離することなく混合物のまま解析し、構造情報や物性情報を得ようと試みました。

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