2013/10/18 Category : 未選択 京大など、ヒトの皮膚細胞から軟骨様細胞へ直接変換に成功 ヒトの皮膚細胞から軟骨様細胞へ直接変換に成功 『PLOS ONE』に掲載 <ポイント> ・2011年にマウスでは2つのリプログラミング(注1)因子と1つの軟骨因子を用いて、皮膚細胞から軟骨様細胞にすることを報告した。 ・今回の研究ではマウスと同じ因子を用いて、ヒト皮膚線維芽細胞から軟骨細胞様細胞にすることができた。 <1. 要旨> 王谷英達(大阪大学医学系研究科/前京都大学CiRA)、妻木範行教授(京都大学CiRA/JST CREST(注2)らの研究グループは、ヒトの皮膚線維芽細胞(注3)からiPS細胞を経ずに軟骨細胞様細胞(induced chondrogenic cell:iChon cell)へと直接変換すること(ダイレクト・リプログラミング)に成功しました。 関節軟骨は骨の端を覆い、滑らかな関節運動を行うにあたって重要な役割を果たしています。軟骨は修復能力が乏しく、損傷を放置すると広い範囲で線維化(注4)などの変性が生じ、関節機能への障害や痛みを引き起こします。治療法のひとつとして、細胞移植が試みられていますが、高品質な軟骨細胞を充分量用意することが困難で、どうしても修復された組織には線維性組織が含まれてしまいます。そこで、高品質な軟骨細胞の供給源を開発することを目標に、妻木教授らのグループでは皮膚の線維芽細胞を軟骨細胞へと直接変換することを試みています。 これまでに妻木教授らのグループではマウス皮膚線維芽細胞に2つのリプログラミング因子(c-MYC,KLF4)と1つの軟骨因子(SOX9)を導入することで、iPS細胞の状態を経ることなく、軟骨細胞様細胞へとダイレクト・リプログラミングできることを報告しています。今回は、ヒト皮膚線維芽細胞を用いて同じ3つの因子(c-MYC, KLF4,SOX9)を導入することにより、軟骨細胞様細胞(iChon cell)を直接誘導できることを明らかにしました。iChon細胞は軟骨細胞の遺伝子パターンを示しており、線維芽細胞特有の遺伝子パターンは消去されていました。また、iChon細胞を免疫不全マウスに移植すると、軟骨組織を作り、奇形腫(注5)などの腫瘍はできませんでした。 本研究により、ヒトの細胞においても線維芽細胞を軟骨細胞へと直接変換しうることが示されました。変換の際に腫瘍形成に大きな影響を与えるとされるc-MYCの遺伝子を導入していることなどから、ヒトでの治療に応用するためにはさらなる改善が必要ですが、細胞を直接変換する方法は軟骨再生において軟骨細胞を供給する手段の一つとなることが期待できます。本研究成果は2013年10月16日17時(米国東部時間)に米国科学誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載されます。 <2. 研究の背景> 関節軟骨は軟骨細胞と細胞外物質のII型・IX型・XI型コラーゲンおよびプロテオグリカンにより作られ、関節の滑らかな動きとショックを和らげる役割を果たしています。軟骨は再生能力が低く、ケガや加齢等の原因により失われてゆきます。 通常関節軟骨は硝子軟骨により構成されていますが、損傷すると一部が線維軟骨に置き換わります。線維軟骨はI型コラーゲンを作り、軟骨特有の細胞外物質構造が失われてしまいます。そのため、軟骨の機能を取り戻すためには、線維軟骨を含まない高純度の硝子軟骨を用意し、軟骨が失われた部分に移植するか、線維軟骨をその場で硝子軟骨に変える必要があります。 軟骨を作製する方法の一つとして、iPS細胞から誘導する方法が考えられます。また、もしiPS細胞を経ないで、線維芽細胞から直接軟骨細胞へと変換する事ができれば、iPS細胞を使う方法よりも短期間で軟骨細胞が得られると考えられます。2011年、妻木教授らのグループはマウスにおいて線維芽細胞から軟骨細胞へとダイレクト・リプログラミングすることに成功したと報告していました。 PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword