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慶大など、糖尿病性腎症の新しい発症メカニズムの解明に成功

糖尿病性腎症の新しい発症メカニズムの解明に成功
尿細管-糸球体連関による早期診断、新たな治療法の可能性に期待



 慶應義塾大学医学部内科学教室(腎臓内分泌代謝)の長谷川一宏助教、脇野修専任講師、伊藤裕教授らは、米国・マサチューセッツ工科大学のLeonard Guarente(レオナルド・ギャランテ)教授との共同研究により、糖尿病性腎症(糖尿病による腎障害)の新しい発症メカニズムの解明に成功しました。透析、心血管病の重要な原因である慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease,CKD)は国民病の一つであり、糖尿病はその原因疾患の第一位です。糖尿病性腎症の撲滅は現代医療の最重要課題の一つと言われています。しかし、現時点でその実現はなされていません。今回の研究統括者である脇野 修、伊藤 裕は、これまで、糖尿病をはじめとする生活習慣病からCKD、心血管病に至る過程を一連の流れ(メタボリックドミノ)の中で捉えてきました。
 本研究では、糖尿病性腎症に着目し、その原因として「尿細管-糸球体連関」という従来にない、全く新しい考え方を提唱し、そして早期の診断による発症阻止の可能性を新たに見出しました。
 本研究結果は、Nature Medicine誌オンライン版に10月20日(日)(米国東部時間)、21日(月)(日本時間)に掲載されます。本研究は、文部科学省科学研究費などの助成により行われました。

1.研究の背景
 糖尿病性腎症-透析導入の最多疾患、現代医療の最重要課題
 糖尿病は現代社会のもたらす最大の生活習慣病で、国内の患者数は約1,000万人と推定されています。糖尿病から生じる腎臓の障害は糖尿病性腎症と言い、透析導入の最大の原因であり、その撲滅は医学の最大の課題の一つと言われています。腎臓は、尿を作り体の中の老廃物や余分な水分を排泄する働きを持ちます。腎臓で生成される尿を作る場所は、腎臓に流れ込む血液が毛細血管のかたまりとして糸くずのような構造となり、濾過器に似た働きをしている糸球体という部分です。この濾過器が目詰まりすれば尿は生成されなくなり、逆に目の粗いザルのように素通りとなれば蛋白尿となり体の蛋白質が減っていきます。腎臓にはさらにこの濾過器で濾し取られた尿のもと(原尿)が通る尿細管という部分があります。この部分では原尿から必要な物を再吸収したり、老廃物を更に原尿の中に排泄します。こうして最終的に体外に排泄される尿が生成されます。

 ※図1は、添付の関連資料を参照

 糖尿病性腎症発症の研究は糸球体障害中心だった
 糖尿病では体の臓器で糖分が利用されなくなり、高血糖をきたして血管にダメージを与えます。
 糸球体も障害されるため、正常なら濾過されない血液中の蛋白が、「目の粗いザル状態になってしまった糸球体」を素通りして、排出されてしまう、これを「蛋白尿」といいます。そのため更に、この蛋白尿が尿細管を痛めつける現象も知られていました。このようにこれまでは糖尿病性腎症は、糸球体障害として捉えられて、糖尿病性腎症の研究は糸球体の障害のメカニズムを中心に行われてきました。

 ※図2は、添付の関連資料を参照

2.研究の概要と成果
 糖尿病性腎症の新しい病気の役者と舞台の発見
 糸球体を中心とした研究による治療は一定の成果(アンジオテンシン受容体拮抗薬の応用)を挙げましたが消滅しません。そこで、本研究グループは、他にも病気の原因があると考えました。糖尿病が、栄養素である糖分、脂肪分を利用してエネルギーをつくりだす「代謝」という生命現象の異常であることに注目し、腎臓の細胞で最も代謝が活発な尿細管が真っ先に障害を受けるのではないかと考えました。
 多くの生命体で、カロリー制限により寿命が延長することが知られており、その原因遺伝子として、長寿遺伝子サーチュイン(以下Sirt1)が知られています。カロリー制限することにより、腎臓でもSirt1の発現は増加します。本研究グループは、Sirt1の尿細管での意義に以前から注目しており、本研究では糖尿病では、カロリー制限した場合とは逆にSirt1のレベルが、糸球体障害が生じる前の時点から既に尿細管で低下していることを発見しました。そして、Sirt1のレベルの低下が細胞の中でエネルギーの状態を調節する役割を果たすニコチン酸という物質の代謝を障害することを見出しました。

 尿細管細胞から糸球体細胞への対話;尿細管-糸球体連関
 さらなる研究の結果、ニコチン酸のうち、ニコチン酸モノヌクレオチド(以下NMN)という物質が尿細管から糸球体に放出されることを見出し、その放出が糖尿病では低下していることを見出しました。このNMNの放出レベルが減ると、糸球体のふるいを構成する足細胞という細胞の機能に異常が認められ、今度は足細胞のSirt1の発現が低下し、ふるいを構成する蛋白の一つクラウディン-1(以下Claudin-1)の発現が上昇して(この現象には、いま注目されているエピジェネテイックスが関与しています)ふるいが障害され蛋白尿が出現するという一連の病気の流れを解明しました。尿細管の細胞から糸球体足細胞へのNMNを仲立ちにした対話が途絶えてしまうことが糖尿病の極めて早い段階で生じ、発症に関与しているのです。この連関を尿細管-糸球体連関と名づけました。

 ※図3・図4は、添付の関連資料を参照

3.研究の意義・今後の展開
 尿細管-糸球体連関の破綻を見つける‐糖尿病性腎症の早期の診断による発症阻止の可能性を開く
 これまで糖尿病性腎症の早期診断としてアルブミン尿(微量の蛋白尿)の検出が多く使われてきました。これは糸球体の障害を早期に検出する方法です。本研究グループは、アルブミン尿が出る前から既に尿細管ではエネルギー代謝の失調を起こし、糸球体障害を招いていることを明らかにしました。尿細管-糸球体連関の破綻が生じた時、もう既に糖尿病性腎症は発症しているのです。したがって尿中のNMNの低下やClaudin-1の上昇レベルを測定すれば糖尿病性腎症の早期の診断が可能となるかもしれません。また、この連関の断絶を修復する、例えばカロリー制限や運動をすることで腎臓のSirt1の働きを活発にすることや、NMNを補充するなどの新しい治療が有効である可能性が考えられます。糖尿病性腎症はある程度進むとなかなか進行を止められません。これまでの進行を遅らせる治療から、発症させない“先制医療”が極めて重要な病気です。
 本研究成果をさらに進めることにより、“超早期”の診断による新たな治療法の発見が期待されます。

 ※図5は、添付の関連資料を参照

4.論文
 Renal tubular Sirt1 attenuates diabetic albuminuria by epigenetically suppressing Claudin-1 overexpression in podocytes.
 (腎臓の尿細管Sirt1はポドサイトにおけるClaudin-1の発現レベルをエピジェネティック制御機構により抑制し、糖尿病性腎症のアルブミン尿を低下させる)
 長谷川一宏、脇野修、Petra Simic、坂巻裕介、水口斉、藤村慶子、細谷幸司、小松素明、金子友香、神田武志、久保田英司、徳山博文、林晃一、Leonard Guarente、伊藤裕
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