忍者ブログ

リリースコンテナ第3倉庫



Home > ブログ > > [PR] Home > ブログ > 未選択 > 東北大、短期間の絶食とインスリン投与が膵島移植の効果を増大することを解明

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

東北大、短期間の絶食とインスリン投与が膵島移植の効果を増大することを解明

短期間の絶食とインスリン投与が膵島移植の効果を増大する
-糖尿病治療のための細胞移植の成績向上へ向けて-


【研究概要】
 東北大学未来科学技術共同研究センター(大学院医学系研究科兼務)の後藤昌史教授、大学院医学系研究科先進外科の大内憲明教授および神保琢也医師らのグループは、糖尿病を対象とする細胞移植治療である膵島(注1)移植において、移植後の短期間の絶食とインスリン投与が膵島移植の効果を劇的に増大することを明らかにしました。これまでの研究により、移植された膵島細胞への栄養血管が完成するまでに約2週間かかることが分かっていました。そこで、この栄養や酸素が十分に行き渡らない時期の膵島細胞を疲弊させないことが移植成績向上へ向けて重要であると考え、短期間の絶食とインスリン投与を組み合わせる新しい膵島移植手術法を考案し、その効果を初めて明らかにしました。この結果は、今後の膵島移植治療の成績向上へ向けた戦略を構築する上で極めて有用な知見になると期待されます。
 この研究成果は、米国の国際学術誌Transplantationの電子版に11月25日(米国東部時間)に掲載されました。

【発表のポイント】
 膵島移植の様な細胞移植治療は、全身麻酔や開腹手術を一切必要とせず、ごく少量の細胞を点滴の要領で注射することで済むため、次世代の画期的移植医療として大きな注目を集めています。しかし、移植後の移植細胞の生着率の改善が重要な課題でした。
 今回の研究により、細胞移植治療の効果が臓器移植治療より弱い一因として、移植直後の栄養血管喪失に伴う疲弊が関与していることが初めて明らかになりました。さらに、移植膵島疲弊への対策として、短期絶食とインスリン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました。移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間、移植膵島をしっかりと休めることで、生着率が改善することが明らかとなりました(図1)。この新規の膵島移植手術法は、極めてシンプルかつ現実的な治療法であり、臨床現場での今後の普及が期待されます。

【研究内容】
 膵島移植は、重症1型糖尿病に対する治療法として既に臨床応用が開始されている。この新しい治療法は、全身麻酔や開腹手術を一切必要とせず、点滴の要領で短時間に終えることが可能である(図2)。そのため、従来行われてきた膵臓移植などの臓器移植療法と比べ、安全・簡便・低侵襲などの利点が着目され、次世代の中心的移植医療になると大きく期待されているが、まだまだ克服すべき課題も多い。その課題の一つが移植膵島細胞の生着不良である。
 膵臓から膵島を回収する操作により、移植直後の膵島は細胞周囲マトリックス(注2)や、栄養と酸素を供給するための血管を失っている。移植膵島周囲への血管構築には約2週間を要することや、高血糖状態が膵島の細胞量減少や機能減弱をもたらすことが報告されており、栄養血管を持たず酸素もエネルギーも供給されない環境下で、血糖変動による仕事負荷や高血糖自体に起因する糖毒性(注3)に曝されることで、移植膵島が疲弊することは十分想定される。
 そこで本研究では、膵島移植後の短期絶食とインスリン投与の組み合わせが移植膵島の生着へ及ぼす影響に関して検証を行った。まず、薬剤により糖尿病を発症させたラットを作成し、つぎに、臨床移植治療で行われている方法と同様に、カテーテルを挿入した門脈(注4)から肝臓に膵島を移植した(経門脈的同系膵島移植)。その後、以下の3つの異なる療法を施行し、それらの効果を比較した。(1)血糖値を適正値まで下げることで膵島への糖毒性を軽減するための移植後インスリン強化療法、食事摂取時の血糖値上昇による仕事負荷を軽減するための短期絶食、および、高カロリー輸液による中心静脈栄養(注5)を組み合わせた方法(Resting群)、(2)インスリン強化療法のみで食事制限を行わない自由摂食(Insulin群)、(3)移植のみで自由摂食(Control群)の3群間で、移植膵島の生着に関し比較検証を行った。
 Resting群、Insulin群の糖尿病治癒率は、Control群に比べ有意に高値を示した。移植後の血糖推移、糖尿病治癒率においてはResting群、Insulin群ともにほぼ同等の改善率を示したが、耐糖能はResting群、Control群間にのみ有意差を認めた。また移植後の肝内グラフト残存量(注6)の指標である肝内インスリン量においても耐糖能と同様、Resting群、Control群間にのみ有意差を認め、Resting群はInsulin群よりも移植膵島の残存率が高いことが判明した(図3)。さらに膵島機能の指標であるSUIT index(注7)においても、Resting群、Control群間にのみ有意な差を認め、Resting群はInsulin群よりもグラフト機能を改善することが明らかとなった(図4)。Resting群においては、酸化ストレスのマーカーが他群より低値を示し、Restingプロトコールの奏功機序の一つとして移植後酸化ストレスの制御が示唆された。
 本研究により、インスリン療法と短期絶食によるグラフト負荷の軽減を組み合わせるResting法は、インスリン療法単独よりも強いグラフト保護効果を有することが初めて明らかとなった。一回の移植において十分なグラフト量の確保が困難である膵島移植において、新規膵島移植手術法であるResting法は移植成績向上をもたらす有用な手法と考えられる。
 本研究は文部科学省科学研究費基盤研究B、科学技術振興機構地域産学官共同研究拠点整備事業(TAMRIC)、および東北大学大学院医学系研究科共通機器室によってサポートされました。

PR

Comment0 Comment

Comment Form

  • お名前name
  • タイトルtitle
  • メールアドレスmail address
  • URLurl
  • コメントcomment
  • パスワードpassword