2013/12/26 Category : 未選択 東北大、精神疾患の原因となるゲノム領域の90%以上に存在する特殊な遺伝子を発見 精神疾患の原因となるゲノム領域の90%以上に存在する特殊な遺伝子を発見<概要> 遺伝情報を担うゲノム上の領域が突然変異により重複・消失することで、各々の遺伝子の数が個人によって違っていることがあります(コピー数多型;(注1)。ほとんどのコピー数多型は無害ですが、統合失調症、自閉症、知的障害、うつ病といった精神疾患の原因となるコピー数多型が報告されています。しかしながら、これら疾患に関わるコピー数多型中には複数の遺伝子が含まれる場合が多く、真に原因となる遺伝子を特定するのは困難でした(図1)。東北大学大学院生命科学研究科生物多様性進化分野の牧野能士助教はイギリスとアイルランドの研究グループと共同で、精神疾患の原因となるコピー数多型と健康な人が持つコピー数多型を比較し、特定のタイプの遺伝子群が精神疾患に強く関わることを突き止めました。牧野助教らは、脊椎動物の初期進化で起きた全ゲノム重複に由来する遺伝子「オオノログ」((注2)に着目し、精神疾患の原因となるコピー数多型の90%以上がオオノログを保持していることを発見しました。今回の研究成果は、オオノログを含むゲノム領域の重複や消失が精神疾患を引き起こすことを示唆しています。今後、オオノログに着目することで、コピー数多型中の疾患原因遺伝子の効率的な同定が期待されます。本研究成果は、12月23日の米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されました。 (注1)コピー数多型: 生物集団内における個体間比較において、ゲノム領域のコピー数の違いをコピー数多型と言います。ゲノム領域のコピー数は重複によって増加し、消失によって減少します。コピー数多型を示すゲノム領域中に遺伝子が含まれる場合、遺伝子の数にも個体差が生まれます。例えば、ある人が遺伝子Aを1つ持つのに対して、別の人が遺伝子Aを2つ持つ場合、遺伝子Aはコピー数多型があると言えます。数多くのヒトのゲノムを調べた研究から、約30%のヒト遺伝子がコピー数多型を持つことが分かっています。コピー数多型を持つゲノム領域の長さは様々で、長いゲノム領域のコピー数多型では複数の遺伝子が含まれます。 (注2)オオノログ: 長い生物進化過程において、希にゲノム(全遺伝子)が重複する大イベントが起こることがあります。これを個別の遺伝子の重複と区別して全ゲノム重複と呼びます。ヒトを含む脊椎動物では、約5億年前の初期進化において2度の全ゲノム重複が起きたことが分かっています。全ゲノム重複により全ての遺伝子が倍加しますが、生じた2コピーの遺伝子は冗長であるため、多くの場合、1つが消失します。一方、全ゲノム重複後も消失せずに重複した遺伝子コピーを保持している遺伝子があり、このような重複遺伝子をオオノログと呼びます(※オオノログは全ゲノム重複による脊椎動物の進化を提唱された大野乾博士にちなんで名付けられました)。オオノログは最適な遺伝子数が厳密に決められている遺伝子群に多く、オオノログの重複や消失が有害な影響を与えるためにコピー数多型を持たない傾向にあります。<研究内容>(背景) 私たちの体の設計図である遺伝子を構成するDNA配列の違いは、身体的特徴の違いや性格の違いなど様々な個性を生み出すのと同時に、病気の原因にもなり得ます。近年、ゲノム領域のコピー数が異なるコピー数多型(注1)の研究が進み、ゲノム上の様々の領域にコピー数多型があることが分かってきました。コピー数多型は複数の遺伝子の重複や消失を伴うことがありますが、多くの場合で無害です。一方、複数の研究グループにより、統合失調症、自閉症、うつ病といった精神疾患などの原因となるコピー数多型が多数報告されています。しかしながら、疾患の原因となるコピー数多型に含まれる複数の遺伝子には共通した特徴が見出されず、真に原因となる遺伝子の特定はできていませんでした(図1)。 コピー数多型の生じやすさは遺伝子によって異なっており、特殊な重複遺伝子であるオオノログ(注2)はコピー数多型を持たない傾向にあります。我々はこれまでに、オオノログは遺伝子数の増減に弱く、例えば21番染色体が一本増加する事によって発症するダウン症候群の原因遺伝子の75%がオオノログであることを報告しています(Makino and McLysaght PNAS 2010)。そこで我々は、オオノログのコピー数多型が精神疾患の発症と関連があるのではないかと考えました。(方法) これまでに報告されている統合失調症、自閉症、知的障害、てんかん、うつ病、双極性疾患といった神経発達障害の原因となるコピー数多型を文献より収集しました。また、健康な人のコピー数多型を大規模に調査した研究により得られた無害と考えられるコピー数多型の情報も収集しました(表1)。そして、無害のコピー数多型と比較して、精神疾患の原因となるコピー数多型の多くにオオノログが含まれるか検証を行いました。(結果) 精神疾患に関る15のコピー数多型領域のうち、90%以上(14領域)にオオノログが含まれていました(図2)。この傾向は他の有害コピー数多型データを用いても同様でした(表1)。一方、無害のコピー数多型では30%程度しかオオノログが含まれず、精神疾患の原因となるコピー数多型が統計的に有意にオオノログを含むことが示されました(表1)。このことは、オオノログを含むゲノム領域の重複や消失が精神疾患を引き起こすことを示唆しています。(今後の展望) コピー数多型の研究が進むにつれて、コピー数多型が原因となる病気が多く報告されるようになりました。今後、オオノログおよびその周辺領域のコピー数多型を調査することで、効率的な有害コピー数多型の同定が可能になり、精神疾患に限らず様々な病気との関連のあるコピー数多型の理解がさらに深まると期待されます。 PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword