2013/12/15 Category : 未選択 東北大など、高性能で量産加工性に優れた鉄基の磁歪材料を開発 新磁歪材料を共同開発 振動発電・ワイヤレスセンサーの普及加速弘前大学 東北大学 東北特殊鋼(JST復興促進プログラム支援プロジェクト)1.要旨 弘前大学(北日本新エネルギー研究所古屋泰文教授)、東北大学(金属材料研究所山浦真一准教授、中嶋宇史助教)、東北特殊鋼株式会社(宮城県村田町、社長 山口桂一郎,(※))は、JST(独立行政法人科学技術振興機構)の復興促進プログラムが支援するプロジェクトで、振動発電やワイヤレスセンサーの実用化と普及促進が期待される、高性能で量産加工性に優れた鉄基の磁歪材料を共同開発しました。 今回開発した磁歪素材の提示、説明と応用事例(振動発電デバイス、力計測(トルク)センサー)を12月19日13:30より東北大学金属材料研究所2号館1階講堂(仙台市青葉区片平2-1-1)にて報道関係の皆様に公開致します。 磁歪材料とは、磁場を加えると僅かに変形する材料で、変形した割合が磁歪と呼ばれます。 逆に、磁歪材料に力を加えて変形させると、材料内部の磁場が変化する逆磁歪現象が起こります。この逆磁歪現象による磁場の変化を、センサーや振動発電に利用することが出来ます。 普通の鉄でも20ppm程度の磁歪を示しますが利用は難しく、これまで実用化されているのは、超磁歪材料と呼ばれ1000ppm以上の磁歪を示すターフェノールD(Fe-Dy-Tb;鉄-ジスプロシウム-テルビウム合金)や200ppmを示すガルフェノール(Fe-Ga;鉄-ガリウム合金)などで、いずれも高価なレアメタルを含み、非常に高価なため、一般にはあまり普及していません。 そこで弘前大学古屋教授と東北大学山浦准教授らは、東北特殊鋼株式会社と共同で、JSTの復興促進プログラムの支援を受け、低コストで普及型の新しい磁歪材料とその応用デバイスの開発プロジェクトを立ち上げて開発を進めてまいりました。 その結果、原料が比較的安価な鉄コバルト(Fe-Co)合金に、圧延や熱処理を施すことにより、超磁歪材料レベルに近い150ppm程度の磁歪を得ることに成功しました。これによって、大幅にコストダウンした磁歪材料の提供が可能となり、機械や橋梁などの構造物・鉄道や自動車などの輸送機器・人や動物、風水流その他の自然の振動を利用した配線不要の分散型電源の普及や、自動車のハンドルのトルクを高精度に測定してパワーステアリングにフィードバックするトルクセンサーなどへの応用が期待されます。 ※事業概要:特殊鋼材・特殊合金の製造・加工・販売、及び熱処理・表面処理の受託など自動車エンジンバルブ用耐熱鋼と電磁ステンレス鋼の国内シェア大 資本金:8億2,750万円 売上高:(単独)145億円(平成25年3月期) 従業員:(単独)354名(同上) ホームページ:http://www.tohokusteel.com2.開発の背景と経緯 磁歪材料としてよく知られ米国で開発されたガルフェノール(Fe-Ga合金)は、比較的機械加工性が良く、振動発電や磁歪アクチュエーター用材料として注目されていますが、類似の用途で工業的に大量生産されているPZT圧電素子に比べ高価なためにあまり普及していません。 しかし、PZT圧電素子は脆くて大型化が難しく、発電素子としても電気抵抗が高く大きな電流を得ることが困難です。 これに対し、古屋泰文教授(弘前大学、プロジェクト研究責任者)らは、非希土類鉄系の磁歪合金(FePd,FeGa,FeCo系)の実用化を目指した基礎研究開発を15年前より実施し、自動車用トルクセンサーへの適用等を検討するとともに、特に2011年には、Co過剰型Fe-Co合金(Co>60%)で、比較的高い磁歪(>60ppm)と、振動発電の高い出力特性が得られることを示しました。 そこで、本共同開発プロジェクトでは、この磁歪量を更に大きくして(>100ppm)、逆磁歪効果を振動発電やトルクセンサーとして実用できるレベルに高めると同時に、一般向けに広く普及可能な低コストで製造する方法の研究開発を進めてまいりました。 開発は、弘前大学と東北大学が主にFe-Co系材料の基礎物性と機能特性の解析、東北特殊鋼株式会社が材料の量産製造工程の開発、三木プーリ株式会社がデバイス開発を担当し、JSTの復興促進プログラム平成24年度採択のプロジェクトを立ち上げて進めてまいりました。3.開発の要点 この開発では、既存の実用磁歪材料ガルフェノールやターフェノールDのような単結晶成長や焼結法などの手法はとらず、鉄鋼生産設備により低コストで製造できる量産工程の確立を目指しました。 そこで、Co過剰型Fe-Co合金の種々の組成及び熱間、冷間での鍛造や圧延、伸線などの加工性の調査と共に、加工に伴う材料内部の微細構造の変化や磁気特性、磁歪特性の調査及びセンサーや振動発電素子としての能力の調査を行いました。 その結果、熱間及び冷間加工と熱処理を組み合わせた処理を施すことによって、現在までに150ppm程度の磁歪と、実用化可能レベルの発電特性及びセンサー特性を持つ、Fe-Co系新磁歪材料及びその低コストな製造方法の開発に成功しました。4.波及効果 既存の実用磁歪材料ガルフェノールやターフェノールDに比べ大幅にコストダウンした新磁歪材料を提供できます。 これを小型の振動発電素子として利用する場合は出力はmWレベルなので、鉄道や橋梁などのインフラや工場機械やプラントなどに設置された安全保守点検モニタリングセンサーのワイヤレス通信用電源などとして利用でき、配電配線設備が不要なユビキタスセンサデバイスの普及への貢献が期待されます。また、自動車や人の歩行などの移動体での振動による電源装置としての活用も期待されます。 比較的大きな素子に利用すると、各種構造物の振動や自然界の風水流などの振動エネルギーから電力を取り出すコンパクトな発電装置として、エネルギーハーベストの分野での活躍も期待されます。 また、力センサーとしては、磁歪材料と磁気検出器だけの単純な構造の小型でコンパクトな力検出デバイスが可能になり、自動車のパワーステアリング用ハンドルトルクセンサーや、機械やロボットなどの狭いスペースに設置するワイヤレス力センサーとして利用も期待されます。 更に、磁歪を利用したアクチュエーターや、振動エネルギーの吸収能力を利用した制振防振装置への利用など、今後様々な分野で、省エネ、安全、利便性の向上に寄与するものと期待されます。 PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword