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東大、岩手県の三陸沿岸で新種の海藻「ナンブワツナギソウ」を発見

三陸山田町で発見した新種ナンブワツナギソウ
~岩手県からの新種海藻75年ぶりの発見~


<発表者>
 鈴木雅大(東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 特任研究員)
 野崎久義(東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 准教授)


<発表のポイント>
 >日本に固有と考えられる海藻の新種を、岩手県の三陸沿岸から75年ぶりに発見した。
 >新種の海藻「ナンブワツナギソウ」は、海藻の形態、生殖器官の形とDNA配列の調査により明らかになった。
 >三陸沿岸に生育する海藻には、独特の種組成があり、本海域の海藻の今後の調査の必要性が明らかとなった。


<発表概要>
  日本列島は世界的にみて、海藻の種の多様性の高い地域として知られ、若布(ワカメ)、昆布(コンブ)、海苔(ノリ)、天草(テングサ)といった身近な食材 はもちろん、1500種以上もの海藻が生育している。しかし、岩手県を含む三陸沿岸は日本の中でも独特の海流の影響にあり、多種多様な海藻が生育する地域 にもかかわらず、北海道や関東地方などと比べると、種の多様性の把握は十分とは言えない状況であった。

 今回、東京大学 大学院理学系研 究科 生物科学専攻の鈴木雅大特任研究員と野崎久義准教授の研究グループは、日本各地から採集した海藻のサンプルについて、詳細な形態観察とDNA配列 データに基づいて種を分類し、岩手県山田町にて新種の海藻「ナンブワツナギソウ」を発見した。

 日本固有の種を発見したことで、日本列島 沿岸の多様性保全に不可欠な種の正確な把握に貢献した。また、岩手県から75年ぶりに新種を発見したことは、三陸沿岸の海藻の種組成が現在認識されている よりも独特かつ多様であるという認識を支持するものである。今後の正確な種の多様性と実態解明につながると予想される。


<発表内容>
1.日本の海藻の種多様性
  日本列島は世界的にみて、海藻の種多様性の高い地域であり、1500種以上が生育している。しかし、種多様性の把握が完全に成されているわけではなく、未 知の海藻が数多く残されていると考えられ、近年では、本来は固有種でありながら、汎存種(注1)として報告されている例が多く知られるようになってきてい る。現在、日本沿岸域は温暖化の影響による海水温の上昇と、それに伴う海藻の種組成の急速な変化が危惧されている。多くの海藻が危機的な状況に置かれる 中、もしも絶滅という最悪の事態になれば、固有種の多くが種を正しく認識されないまま絶滅する、あるいは絶滅の危機に瀕していることすら認識されないまま 消失していく可能性が高い。種の多様性における損失、負の影響は計り知れず、海藻の正確な種分類が緊急に必要とされている。

2.なぜ山田町か
  岩手県を含む三陸沿岸は、リアス式の複雑な海岸線に加え、親潮、黒潮からの暖水渦(注2)、津軽海峡を抜けて流れ下ってくる対馬海流(津軽暖流)の3本の 海流の影響を受けており(図1)、多種多様な海藻が豊富に生育している。中でも岩手県下閉伊郡山田町は、穏やかな山田湾と荒い岩礁帯からなる船越半島があ り、変化に富んだ海岸には亜寒帯性と温帯性の海藻がみられ、スギモク(注3)をはじめとした数種の日本海特産種(注4)も生育している。岩手県沿岸はこの ような独特の種組成を持ちながら、分類学的な研究が少なく、新種においては1938年に2種類が記載されたのみであった。これまでに東京大学 大学院理学 系研究科 生物科学専攻の鈴木雅大博士と故吉崎 誠(*)博士(東邦大学名誉教授)は、三陸沿岸の海藻に注目し、13年間に亘って山田町の海藻を調査し、 178種の生育を確認している。178種のうち、31種は岩手県で初めての報告となる海藻であり、2010年にはヘイゴコロ(注5)を日本新産種として報 告している(図2)。

 *博士名の正式表記は、添付の関連資料を参照


 ※図1、2は添付の関連資料を参照


3.汎存種ワツナギソウと新種ナンブワツナギソウ
  ワツナギソウ(学名 Champia parvula)は、海藻の典型的な汎存種の一つで、極域を除く世界各地に分布し、海藻の中で最も分布域の広い種類 の一つである。日本でも北海道から沖縄まで幅広く分布している。ワツナギソウ類は枝が円柱形か扁平かなどの特徴で分類され、日本に生育する円柱形のワツナ ギソウ類はワツナギソウ1種のみであった。今回研究グループは、日本各地で円柱形のワツナギソウ類を採集し、形態観察とDNA配列データの決定を実施した ところ、山田町で採集した"ワツナギソウ"が、汎存種ワツナギソウとは別種であることが判明した。研究グループは、ワツナギソウの形態を、体構造や生殖器 官も含めて徹底的に比較し、山田町産の"ワツナギソウ"と、汎存種ワツナギソウの嚢果(注6)の形にはっきりとした違いがあることを明らかにした(図 3)。さらに、DNA配列のデータによって、山田町産の"ワツナギソウ"が汎存種ワツナギソウとは系統的に離れていること、現在知られているどのワツナギ ソウ類のDNA配列のデータとも一致しないことを確かめた(図4)。この"ワツナギソウ"は、山田町及び周辺の三陸沿岸の固有種と考えられることから、南 部藩(注7)にちなみ「ナンブワツナギソウ(学名 Champia lubrica)」と命名した。

4.山田町及び三陸沿岸の海藻の種多様性
  2010年の日本新産種ヘイゴコロの発見に続き、新種ナンブワツナギソウの発見は、山田町を含む三陸沿岸の海藻の種組成の正しい認識に大きく寄与するもの で、この地域の海藻の種組成が、これまで認識されていたものよりも独特かつ多様であるという認識を支持するものである。この地域には、ヘイゴコロやナンブ ワツナギソウ以外にも未だに見つかっていない多くの種が残されている可能性があり、三陸沿岸の種の多様性の保全のため、更なる分類学的研究と正しい種組成 の解明が急務である。加えて、山田町が所有していた海藻標本(注8)は、三陸沿岸の海藻の種多様性を知る上で貴重な財産であったが、その大部分は、東日本 大震災による津波で被災し、失われている。本研究は、鈴木博士が故吉崎博士と共に採集し、個人で所蔵していた標本に基づいているが、これまでに山田町で確 認した海藻全種を網羅するには足りておらず、今後の継続的な調査と海藻標本の補填が必要である。

 本研究は、文部科学省の科学研究費補助金(新学術領域研究「動植物アロ認証」、課題番号24112707、代表者 野崎久義)の支援を受けて行われた。


<発表雑誌>
 雑誌名
  「Phycologia(国際藻類学会誌)」52巻6号(2013年)p.609-617.
 論文タイトル
  Morphological and molecular evidence support the recognition of Champia lubrica sp.nov.(Champiaceae,Rhodophyta)from Japan
 著者
  >鈴木雅大(東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 特任研究員)
  >橋本哲男(筑波大学 大学院生命環境科学研究科 構造生物科学専攻 教授)
  >北山太樹(国立科学博物館 植物研究部 菌類・藻類研究グループ 研究主幹)
  >野崎久義(東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 准教授)
 DOI番号
  10.2216/13-128.1
 アブストラクトURL
  http://www.phycologia.org/doi/abs/10.2216/13-128.1
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