本研究ではLDDに関連する新たな遺伝子CHST3を発見し、椎間板を維持するメカニズムの一部が明らかとなりました。さらなる研究により、分子レベルでLDDの病態の理解が進み、新しい予防法や治療法、またその治療薬の開発が進むものと期待できます。成果は、科学雑誌『The Journal of Clinical Investigation』に掲載されるに先立ち、オンライン版(10月8日付:日本時間10月9日)に掲載されます。
<背景>
腰椎椎間板変性症(LDD:Lumbar Disc Degeneration)は、腰椎の椎間板の老化に伴う変性によって発症する疾患の総称です。骨・関節の疾患の中で最も発症頻度の高い疾患の1つで、腰痛症や腰椎椎間板ヘルニア(LDH:Lumbar Disc Herniation、図1)もLDDが起因となって発症します。腰痛症の年間有病率は30%、生涯罹患率は80%といわれています(出典:Andersson,G.B.1999.Epidemiological features of chronic low-back pain.Lancet.354:581-585.)。痛みにより日常生活動作が障害され、患者個人の生活の質が低下し、医療上の問題だけでなく労働生産性の低下などの社会的な問題も生じています。しかし、その発症のメカニズムは未だ不明で、予防法や根本的な治療法の開発が期待されています。
<研究手法と成果>
骨関節疾患研究チームは、多段階のゲノムワイド相関解析(GWAS:Genome-Wide Association Study)を用いて、ゲノム全体から原因遺伝子の存在する領域の絞り込みを行いました。LDHはLDDの一部、進行した重度のLDDと考えられています。そのため、本研究ではLDHとLDD患者から採取したDNAサンプルを用いました。