これらの結果は、非増幅deepCAGE法を用いた遺伝子発現の定量解析が、既存の薬剤の標的タンパク質や作用機序の解明などに広く応用可能であり、新薬開発での薬理学分野への貢献が期待できることを示しています。本成果は、科学雑誌『CPT Pharmacometrics and Systems Pharmacology』(9月25日付け:日本時間9月26日)に掲載されました。
CAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法は、理研が開発した独自の技法です。この特徴は、mRNAの末端の塩基配列(CAGEタグ)を調べて1塩基の精度でゲノム上に存在する転写開始点[5]を網羅的に同定することにより、その直上流に存在するプロモーターを同定し、かつ、その位置からスタートする転写物の発現量(プロモーター活性)も測定できることです。CAGE法は、理研が主催する国際科学コンソーシアムFANTOM[6]でのゲノム全域な解析に用いられました。さらにFANTOMではCAGEの技術を次世代シーケンサーと組み合わせることでdeepCAGE法を開発し、血球系細胞の分化過程におけるプロモーターレベルでの転写制御ネットワーク解析に成功しました(注1))。また最近では、ヒトゲノムの全ての機能要素の解析を目指したENCODEプロジェクト[7]において、プロモーター活性を示す指標としてCAGEデータが使われました(注2))。
<原論文情報>
・Kazuhiro Kajiyama,Mariko Okada-Hatakeyama,Yoshihide Hayashizaki,Hideya Kawaji,Harukazu Suzuki."Capturing drug responses by quantitative promoter activity profiling."CPT Pharmacometrics and Systems Pharmacology,2013,doi:10.1038/psp.2013.53