忍者ブログ

リリースコンテナ第3倉庫



Home > ブログ > > [PR] Home > ブログ > 未選択 > 東大、嗅神経芽細胞腫のウイルス療法を開始

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

東大、嗅神経芽細胞腫のウイルス療法を開始

嗅神経芽細胞腫のウイルス療法を開始
~東大医科学研究所における臨床研究が本格始動~


 東京大学医科学研究所附属病院では、脳腫瘍外科 教授 藤堂具紀を総括責任者として、嗅神経芽細胞腫のウイルス療法を開始します。ウイルス療法とは、がん細胞だけで増殖するように改変した、人工的なウイルスを使ってがん細胞を破壊する、新しいがん治療法です。用いるのは藤堂教授らが開発した第三世代のがん治療用単純ヘルペスウイルス1型のG47Δ(ジーよんじゅうななデルタ)で、2009年から開始した悪性脳腫瘍の臨床研究では脳腫瘍内への投与が安全に実施されています。嗅神経芽細胞腫は鼻腔の奥から発生する稀ながんで、今回は、手術と放射線治療のあとに再発した患者を対象にウイルス療法を行います。嗅神経芽細胞腫のウイルス療法は世界で初めてであり、安全性と同時に、繰り返し投与することによる治療効果を調べることが目的です。医科学研究所附属病院では、今後も順次、さまざまながんを対象にした臨床研究を試みる予定であり、ウイルス療法の臨床開発への本格的な取組を始動します。


【発表者】
 東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科 教授 藤堂 具紀(とうどう ともき)


【嗅神経芽細胞腫(きゅうしんけいがさいぼうしゅ)について】
 嗅神経芽細胞腫は鼻腔の奥に発生する比較的稀な悪性腫瘍で、全鼻副鼻腔悪性腫瘍の約5%です。鼻づまりや鼻出血などあまり特徴のない症状を呈するため、見つかった時には頭蓋内に進展していることも多い腫瘍です。一般的に、手術によって可能な限り腫瘍を摘出したあと放射線治療が行われます。腫瘍が残存するとほとんどが再び進行し、再発した腫瘍に対しては有効な治療法がありません。再発後の平均的な生存期間は10ヶ月程度とされます。根治のためには、ウイルス療法のような新しいアプローチによる治療法の開発が必要です。


【がんのウイルス療法とは】
 がんのウイルス療法とは、がん細胞のみで増えることができるウイルスを感染させ、ウイルスが直接がん細胞を破壊する治療法です。ウイルス療法では、遺伝子工学技術を用いてウイルスゲノムを「設計」して、がん細胞ではよく増えても正常細胞では全く増えないウイルスを人工的に造って臨床に応用します。がん細胞だけで増えるように工夫された遺伝子組換えウイルスは、がん細胞に感染するとすぐに増殖を開始し、その過程で感染したがん細胞を死滅させます。増殖したウイルスはさらに周囲に散らばって再びがん細胞に感染し、ウイルス増殖、細胞死、感染を繰り返してがん細胞を次々に破壊していきます。一方、正常細胞に感染した遺伝子組換えウイルスは増殖できないような仕組みを備えているため、正常組織は傷つきません(下図)。
 遺伝子組換えウイルスを用いたウイルス療法の開発は、1990年代以降、欧米を中心に世界で活発化しており、さまざまなウイルスを用いた臨床試験が実施されています。中でも、単純ヘルペスウイルス1型を応用したウイルス療法開発は、欧米での治験が最終段階に入っているものもあり、実用化にもっとも近いと考えられます。

 ※参考画像は、添付の関連資料「参考画像(1)」を参照


【G47Δ(ジーよんじゅうななデルタ)とは】
 単純ヘルペスウイルス1型は、口唇に水疱ができる口唇ヘルペスの原因ウイルスとして知られていますが、1)ヒトのあらゆる種類の細胞に感染できること、2)細胞を殺す力が比較的強いこと、3)抗ウイルス薬が存在するため治療を中断できること、4)患者がウイルスに対する抗体を持っていても治療効果が弱くならないことなど、がん治療に有利な特長を多く備えています。単純ヘルペスウイルス1型から、正常細胞では必要でがん細胞では不要なウイルス遺伝子を取り除くと、がん細胞だけで増えるウイルスを造ることができます。G47Δは、そのようなウイルス遺伝子を3つ改変した世界初の第三世代の遺伝子組換えヘルペスウイルスです(下図)。G47Δは、がん細胞に限ってウイルスがよく増えるように工夫されており、既存のがん治療用ウイルスに比べて安全性と治療効果が格段に高いものとなっています。また、G47Δががん細胞を破壊する過程で、がんワクチン効果が強く引き起こされるために、G47Δを投与した部位のみならず、抗がん免疫を介して離れた部位にあるがんにも治療効果があると期待されます。さらに、G47Δは、がんの根治を阻むとされるがん幹細胞を効率よく破壊することが判っています。
 東京大学では、世界に先駆けてG47Δの臨床応用を開始しており、2009年から膠芽腫(悪性脳腫瘍)、本年からは前立腺がんを対象とした臨床研究を実施しています。

 ※参考画像は、添付の関連資料「参考画像(2)」を参照


【臨床試験の概要】
 対象疾患:手術・放射線治療後に再発した(治療中の増大を含む)嗅神経芽細胞腫
 投与方法:腫瘍内への直接投与。ウイルス投与ができなくなるまで、もしくは腫瘍が治療に反応せず進行するまで、4週間毎に繰り返し投与
 予定症例数:10例
 目的:安全性と治療効果の評価
 評価期間:最終投与後3ヶ月間
 試験開始時期:2013年9月中旬


【今回の臨床試験の特徴】
 G47Δを世界で初めてヒトに投与する、いわゆるファースト・イン・マン(first-in-man)臨床試験は、膠芽腫(悪性脳腫瘍)の患者を対象に、2009年から開始され、現在にいたるまで、G47Δの脳腫瘍内投与は安全に実施されています。その臨床データを踏まえて、今回の臨床研究では、腫瘍が縮小してしまうなどの理由でG47Δの投与ができなくなるか、腫瘍が治療に反応せず進行が確認されるまで、再発した嗅神経芽細胞腫の腫瘍内へのG47Δ投与を4週間毎に繰り返し行う計画となっています。これは、G47Δが実用化された際には、がんが治るまで繰り返して投与される治療法となると想定されるためです。また今回は、仮に腫瘍がウイルス療法に反応して一旦縮小したのちに再び大きくなってきた場合でも、適格基準に合えば、再度臨床研究に参加することができます。腫瘍に対する免疫反応が起きることを前提に、画像診断における効果判定にも工夫がなされています。


【実施承認までの経緯について】
 今回の臨床研究の実施計画は、「遺伝子治療臨床研究に関する指針」に則って、2013年5月31日に東京大学医科学研究所遺伝子治療臨床研究審査委員会の承認を得たのち、厚生労働省に申請書類が提出され、2013年6月28日付で厚生労働大臣の承認を受けました。また並行して「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(カルタヘナ法)に則って、増殖型遺伝子組換えウイルスを使用するための第一種使用規程が厚生労働省に申請され、2013年8月22日付で厚生労働大臣と環境大臣の承認を受けました。
 G47Δの臨床開発は、現在なお、アカデミア発のトランスレーショナルリサーチ(注1)として進められており、文部科学省「がんトランスレーショナル・リサーチ事業―革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進―」(平成16(2004)年~平成20年(2008)度)、文部科学省「橋渡し研究支援推進プログラム」(平成19(2007)年~平成23(2011)年度)、文部科学省「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」(平成24(2012)年度~)、内閣府「最先端研究開発支援プログラム」(平成21(2009)年~平成25(2013)年度)などの支援を受けています。
 この臨床研究に用いるG47Δの臨床製剤は、東京大学医科学研究所の治療ベクター開発室の製造施設において国際基準(GMP)に準拠して藤堂具紀教授の研究チームが製造し、GMP基準での徹底した品質試験を実施して合格したものです。


 (注1)トランスレーショナルリサーチ:医療につながる基礎研究成果を臨床における実用化に橋渡しする開発研究を指します。知的財産権の確保、臨床に用いる製剤の製造・品質試験・安定性試験、動物を用いた安全性試験、臨床試験実施計画の作成、規制対応など、数多くのプロセスを経ます。また、多大な開発資金と多大の労力を必要とします。


【参照URL】
 ・東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科
  http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/glioma/research/virus.html
 ・東京大学医科学研究所附属病院 医療安全管理部
  http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/dctsm/index.html
 ・文部科学省「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」
  http://www.tr.mext.go.jp/
PR

Comment0 Comment

Comment Form

  • お名前name
  • タイトルtitle
  • メールアドレスmail address
  • URLurl
  • コメントcomment
  • パスワードpassword