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理化学研究所、光合成によるバイオプラスチックの生産効率で最高レベル達成

光合成によるバイオプラスチックの生産効率で世界最高レベル達成
-ラン藻によるバイオプラスチックの新たな合成経路を確立-


<ポイント>
 ・光合成だけでバイオプラスチックを生産、生産効率14%を達成
 ・ラン藻に微生物由来の遺伝子を導入、糖類不要の培養液で育成が可能に
 ・バイオプラスチックの低価格化と環境負荷の低減に貢献

<要旨>
 理化学研究所(理研、野依良治理事長)とマレーシア科学大学(オマール・オスマン副学長)は、ラン藻[1]に微生物の遺伝子を導入し、光合成だけで高効率にバイオプラスチック[2]を生産することに成功しました。これは、理研環境資源科学研究センター(篠崎一雄センター長)バイオマス工学連携研究部門合成ゲノミクス研究チームの松井南チームリーダーと、マレーシア科学大学生物学部スーディッシュ・クマール教授らの共同研究グループによる成果です。

 石油を原料とした製品の生産や消費の過程で大量に排出される二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化をもたらす要因とされ、世界規模での排出量削減が課題になっています。環境負荷の少ない社会を構築するために、石油に依存する消費サイクルから循環型サイクルへの転換が必要です。

 さまざまな用途に使われているプラスチック製品はほとんどが石油由来です。これに対して、微生物が作りだすバイオプラスチックは、微生物による分解性を備えるなど環境への負荷が少なく、温暖化の原因とされるCO2の削減効果が期待できます。しかし、バイオプラスチックの生産には、微生物の培養に大量の糖と特別な施設が必要で、コスト面に課題があります。

 共同研究グループは、バイオプラスチックの1つ「ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)」[3]を光合成だけで生産するためにラン藻に注目しました。ラン藻にバイオプラスチック合成に関わる遺伝子を導入し、光合成によるバイオプラスチック合成手法の開発に取り組みました。これが可能になれば、太陽光と、糖を含まない無機塩類の培養液から、CO2からプラスチックの生産が可能になります。実験では、ラン藻に3種類の微生物由来の遺伝子(phaB、phaC、nphT7)を導入しました。その結果、溶液の炭素源なしでラン藻の乾燥重量の14%に当たるPHAを合成し、世界最高レベルの生産効率を達成しました。さらに微量の炭素源として0.4%の酢酸を加えることで、PHA生産量は乾燥重量の41%まで向上しました。

 研究成果は、米国の科学雑誌『PLOS ONE』オンライン版(1月22日付け:日本時間1月23日)に掲載されます。


<背景>
 バイオプラスチックは生物由来のプラスチックであり、飲料容器や、車の内装、パソコンなどあらゆる用途に使われ始めています。また、微生物による分解性(生分解性)を備えた素材も開発され、石油由来のプラスチックには無い、環境負荷低減効果が期待されています。バイオプラスチックの1つ「ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)」の生産では、微生物が使われていますが、培養にグルコースなどの糖が必要であり、かつ特別な施設を作らなければならないため、生産コストが高くなるという問題があります。植物や光合成微生物によるバイオプラスチックの生産技術の開発は世界中で進められています。しかし、その生産性は、使用する植物や微生物の乾燥重量の数%以下と非常に低く、また、生育遅延などの問題も報告されています。


<研究手法と成果>
 藻類は、CO2を炭素源とした光合成により、他の栄養源を必要とせずに生育することができます。共同研究グループは、まずラン藻にPHAを生産させるため、PHA生産に必要なphaA、phaB、phaC(カプリアビダス属由来)という酵素をつくる3つの遺伝子を導入しました。しかし、PHAはほとんど生産されませんでした。

 そこで、phaA遺伝子の代わりに、放線菌(Streptomyces sp.CL190)由来のnphT7遺伝子を導入しPHA生産の代謝経路を変えてみました。(図1)。PhaAが可逆反応を起こす酵素であるのに対しnphT7遺伝子がつくる酵素NphT7は、一方向の不可逆反応を起こす酵素のため、PHA生産の流れを強制的に起こすことができます。さらに、マレーシア科学大学が単離したphaC(クロモバクテリア属由来)も導入し、さらなる生産効率の向上を目指しました。

 phaA遺伝子の代わりにnphT7遺伝子を導入したラン藻を、糖を含まない無機塩類の培養液で育成し、空気中のCO2を炭素源とした光合成を行った結果、ラン藻の乾燥重量の14%にあたるPHAを合成できました(図2)。この値は、光合成だけを使ったPHA生産の世界最高値になります。さらに、炭素源として0.4%の酢酸を加えたところ、この生産効率が向上し、世界最高レベルのラン藻の乾燥重量の41%までPHAを生産させることができました(図3)。


<今後の期待>
 光合成によるバイオプラスチックの生産は太陽光だけで可能であり、高価な栄養源が不要です。このため、今回のラン藻による高効率のバイオプラスチック生産方法の開発によって、生産コストが大幅に低減され、製品も安価に提供できるようになると期待できます。ラン藻は、繁殖力が非常に大きい藻類です。ゴムの主成分のイソプレン、バイオエタノールのイソブチルアルコールなどの化合物の生産も報告されています。今回の研究で見いだした改変代謝経路は、これらの物質への生産力向上にも応用することが可能です。また、新しく導入した代謝経路による細胞の全体の変化を調べるためにラン藻の全遺伝子の発現解析を行い、生産性向上のために必要な遺伝子候補を見いだしました。

 これらの研究成果を活用し、太陽光によるクリーンで安全なバイオプラスチック生産プロセスが構築されると期待できます。


<原論文情報>
 ・Nyok-Sean,Lau,Choon Pin,Foong,Yukio,Kurihara,Kumar,Sudesh,Minami Matsui
 "RNA-seq analysis provides insights for understanding photoautotrophic polyhydroxyalkanoate production in recombinant Synechocystis sp",PLOSONE,2013,doi;10.1371/journal.pone.0086368


<発表者>
 独立行政法人理化学研究所
 環境資源科学研究センター(http://www.riken.jp/research/labs/csrs/
 バイオマス工学連携部門(http://www.riken.jp/research/labs/csrs/biomass_eng/
 合成ゲノミクス研究チーム(http://www.riken.jp/research/labs/csrs/biomass_eng/synth_gen/
 チームリーダー 松井 南(まつい みなみ)
PR

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