2013/12/13 Category : 未選択 北大など、結核とアフリカ睡眠病の100円診断キットを開発 結核、アフリカ睡眠病の100円診断キットを開発<研究成果のポイント> ・安価な遺伝子診断キットを開発。 ・結核やアフリカ睡眠病の早期診断が可能。 ・開発途上国に実装可能。<研究成果の概要> 独立行政法人 科学技術振興機構(JST)と独立行政法人 国際協力機構(JICA)が連携して実施する地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)(注1)の一環として、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの鈴木定彦教授らは、開発途上国に実装可能な安価で操作が簡便な結核(注2)ならびにアフリカ睡眠病(注3)の迅速診断法を開発し、ザンビア共和国の研究・検査従事者が自国で独自に実施できるように技術導入を行いました。 従来からの結核確定検査は喀痰(かくたん)中の結核菌の培養によるものでしたが、操作が煩雑であること、実験室感染のリスクが伴うこと、結果の判定までに約1ヶ月と長時間を要することから簡便、安価で迅速な確定診断法の開発が望まれていました。一方、アフリカ睡眠病の従来検査は、血液中のトリパノソーマ原虫を顕微鏡下で見つけることでしたが、感度が低く早期発見ができないことから、高感度で迅速な診断法の開発が望まれていました。 本研究グループは、試験管内等温遺伝子増幅法であるLAMP法(注4)を応用することにより、1検体あたり約100円で迅速に臨床検体中の結核菌あるいはトリパノソーマ原虫の遺伝子を検出する技術の開発に成功しました。 本技術により、結核ならびにアフリカ睡眠病の安価な早期診断が可能となり、適切な治療が発病早期から開始されるようになります。これにより、治療率が向上し、当該感染症による死亡者数の低減につながるとともに患者数の大幅な低減にも貢献します。 本研究は、ザンビア共和国保健省大学研究教育病院ならびにザンビア大学獣医学部とのSATREPS共同プロジェクトとして、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの梶野喜一准教授ならびに鳥取大学の松葉隆司講師らをメンバーとするグループにより実施したものです。<プロジェクトの概要> 本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS) 研究領域:「開発途上国のニーズを踏まえた感染症対策研究」 研究課題名:「結核及びトリパノソーマ症の診断法と治療薬開発」 研究代表者:北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター教授鈴木定彦 研究期間:平成20年10月~平成26年3月 上記研究課題では、結核およびトリパノソーマ症の迅速診断法ならびに結核の迅速薬剤感受性試験法を開発し、ザンビア共和国において同国由来検体を用いて性能を評価しました。また、トリパノソーマ症の治療薬候補物質を合成し、トリパノソーマ培養系を用いた有効性評価により開発候補物質を選定しました。<研究成果の概要> (研究の背景と経緯) 近年、結核、伝達性ウシ海綿状脳症、SARS、ニパウイルス、ハンタウイルス、ヘンドラウイルスおよび新型インフルエンザウイルス感染症、エボラ出血熱、肺ペスト、レプトスピラ病等の新興・再興感染症が世界各地で人類を脅かしています。 中でも結核は人類の3分の1が感染し、年間約900万人の新規登録患者と約140万人の死者を出している疾患であり、その対策が切望されています。特にアジア、アフリカ諸国では数多くの患者が見られ、全世界の結核患者の4分の3がアジア、アフリカ諸国に集中していると言われています。アフリカ睡眠病は、サハラ砂漠以南のアフリカに見られる疾病で、年間の死亡者は約5万人と推定されています。高頻度にマラリア等の他の熱性疾患と誤診され、結果として不適切な治療による重篤化につながる例が少なくないため、早期の鑑別診断が重要となっています。 このような状況下では、安価で簡便な診断法の開発と普及による診断結果をもとにした適切な治療が不可欠であり、急を要していました。しかしながら、従来からの結核確定検査は喀痰中の結核菌の培養によるものでしたが、操作が煩雑であること、実験室感染のリスクが伴うこと、結果の判定までに約1ヶ月と長時間を要するために簡便、安価で迅速な確定診断法の開発が望まれていました。一方、アフリカ睡眠病の従来検査は血液中のトリパノソーマ原虫を顕微鏡下で見つけることでしたが、感度が低いため早期発見ができず、高感度で迅速な診断法の開発が望まれていました。 (研究の内容) 本研究グループでは、開発途上国でも実装可能な、安価、簡便かつ高感度で迅速な診断法の開発を目指して研究を進めた結果、以下の成果を得ました。 1)試験管内等温遺伝子増幅法であるLAMP法を応用することにより、簡便、安価で迅速に臨床検体中の結核菌あるいはトリパノソーマ原虫の遺伝子を検出する技術を開発しました。 2)低温流通体系(コールドチェーン)が完備されていない開発途上国においても実装を可能とするための全ての試薬を乾燥状態にした診断キットを1検体あたり約100円の低コストで開発しました。 3)検査結果の判別をより鮮明にするための低コスト小型蛍光検出器(約3,000円)を開発しました。 (今後の展開) 本技術により、結核ならびにアフリカ睡眠病の早期診断が可能となり、適切な治療が早期に開始されることになります。早期治療が可能となれば、当該感染症による死亡者数の低減につながるとともに患者数の大幅な低減にも貢献します。 現在アフリカ睡眠病診断法は、実際に患者の診断に活用され始めています。一方、結核診断法はザンビア共和国での公定法としての承認を受けるため、同国政府保健省主導のもと大学研究教育病院を中心としたチームによる評価試験の段階に入っています。ザンビア共和国の関連団体より注目され、問い合わせもあり、今後、WHO、企業等とも連携していく予定です。 PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword