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新潟大など、糖尿病の発症に関わる新たな分子を発見

糖尿病の発症に関わる新たな分子を発見
-脂肪の老化と炎症を結ぶ鍵分子の同定-


<ポイント>
 ・糖尿病の発症には、脂肪細胞の老化とそれに伴う炎症が重要であることがわかっている。
 ・脂肪細胞の老化と炎症を結ぶ鍵分子としてセマフォリンたんぱく質を同定。
 ・セマフォリン阻害による新たな糖尿病治療開発の可能性。

 JST課題達成型基礎研究の一環として、新潟大学の南野徹教授らは、糖尿病の発症に関わる新たな分子を同定し、その鍵分子機能の阻害が新たな糖尿病の治療標的となることを明らかにしました。
 日本人の糖尿病の大部分を占める2型糖尿病(注1)の発症は、内臓脂肪の蓄積とそれに伴う炎症が重要であることがわかっていますが、その仕組みについては不明な点が残されています。これまで研究者らは、過食・肥満に伴って内臓脂肪の老化が進み、炎症を引き起こすことで2型糖尿病の発症につながることを明らかにしていました。しかし、老化が進むことにより、どうして炎症が起こるかはわかっていませんでした。
 今回南野教授らは、過食・肥満に伴い、マウスの内臓脂肪においてセマフォリン3E(注2)というたんぱく質が多量に分泌され、炎症を引き起こしていることを発見しました。セマフォリン3Eの産生は、脂肪細胞の老化を促進すると増加し、逆に抑制すると減少しました。肥満や脂肪細胞の老化による糖代謝の異常(注3)は、セマフォリン3Eを阻害することによって改善しました。さらに、2型糖尿病患者の血中セマフォリン3Eが増加していたことから、ヒトの糖尿病においてもセマフォリン3Eによる脂肪組織の炎症がその病態に関与している可能性があります。
 本研究成果は、セマフォリン阻害という2型糖尿病に対する新たな治療戦略の開発につながるばかりでなく、加齢に伴う疾患の発症機構を知る上で重要な知見となりうるものと考えられます。
 本研究成果は、2013年10月1日(米国東部時間)発行の米国科学誌「CellMetabolism」に掲載されます。

 本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
  戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけ)
  研究領域:「炎症の慢性化機構の解明と制御」
         (研究総括:高津聖志富山県薬事研究所所長)
  研究課題名:長寿・老化モデルマウスを用いた慢性炎症機構の解明
 研究者:南野徹(新潟大学医学部循環器内科学分野教授)
 研究期間:平成23年10月~平成27年3月

 JSTはこの領域で、炎症の慢性化機構という現象の実体解明に向けた研究を行い、それに基づき、がん・動脈硬化性疾患・アレルギー・自己免疫疾患などの炎症の慢性化が関与するさまざまな疾患の予防や治療、創薬につながる新たな医療基盤の創出を目指しています。上記研究課題では、生活習慣病などの原因となる加齢に伴う臓器の慢性炎症に関し、長寿および老化促進マウスを用いて加齢に伴う慢性炎症の機序の解明を行うことにより、生活習慣病などの新しい治療法の開発を目指します。


<研究の背景と経緯>
 動物個体と同様に、一つ一つの細胞にも寿命があり、過剰な細胞分裂や酸化ストレスなどによる染色体の傷害によって細胞が老化してゆき、分裂が止まって寿命を迎えることが知られています(図1)。細胞の老化の過程には、染色体傷害によって引き起こされるp53依存性のシグナル(注4)が重要であることがわかっています。
 細胞の老化と個体の老化との関連は不明な点がありますが、これまでに、その関連を示唆する研究結果がいくつか報告されています。例えば、高齢者や早老症候群の患者から得られた細胞の寿命は短いこと、加齢に伴って老化細胞が蓄積することなどが知られています。研究者らは以前より、細胞の老化が血管の老化・動脈硬化に関与することや、p53依存性のシグナルが心不全を促進することを報告してきました。
 近年、これらの循環器疾患の発症基盤として、糖尿病やメタボリック症候群といった代謝性疾患が重要視されています。これらの疾患では、肥満に伴う内臓脂肪の蓄積と炎症、それによって引き起こされるインスリン抵抗性(注3)がその病態の基盤にあると考えられています。さらに研究者らは、肥満に伴う内臓脂肪の老化、すなわち、p53依存性のシグナルの活性化が、脂肪組織の炎症とそれに伴うインスリン抵抗性を引き起こす重要なメカニズムであることを報告しています(図2)。しかし、内臓脂肪におけるp53依存性のシグナルの活性化が、どのようにして脂肪組織の炎症を引き起こすのかについては明らかとなっていません。そこで、本研究では、脂肪細胞の老化と脂肪組織の炎症との関係の解明に取り組みました。


<研究の内容>
 今回南野教授らは、セマフォリン3Eというたんぱく質が脂肪細胞の老化と脂肪組織の炎症を結ぶ鍵分子として働くことを明らかにしました。セマフォリン3Eの受容体としてプレキシンD1が同定されています。これまでの報告から、p53依存性のシグナルによって産生量の調整を受ける可能性のあることが示唆されています。
 まず、内臓脂肪におけるセマフォリン3Eの産生量について調べてみると、高カロリー食を与えて2型糖尿病を起こさせたマウスの脂肪細胞で、セマフォリン3Eの遺伝子発現量が増加していることがわかりました(図3)。この2型糖尿病マウスに、セマフォリン阻害薬を投与したり、あるいはセマフォリン3E遺伝子の欠損マウスに高カロリー食を与えたとき、脂肪組織の炎症は抑制され、インスリン抵抗性は改善しました。逆に、セマフォリン3Eを脂肪組織で過剰に産生させたマウスモデルでは、脂肪組織の炎症が起こり、糖代謝異常が認められました(図4)。
 一方、脂肪組織におけるプレキシンD1の存在場所を調べると、さまざまな組織で炎症反応を引き起こすマクロファージという細胞の表面に多く存在することが明らかになりました。2型糖尿病マウスの脂肪細胞から産生されるセマフォリン3Eが、このマクロファージのプレキシンD1に作用して、脂肪組織へマクロファージを遊走させる(引き寄せる)因子として働くことが明らかとなりました(図5)。セマフォリン3Eにより、脂肪組織内へ遊走してきたマクロファージが脂肪組織の炎症を引き起こす可能性が示唆されました。
 次に、セマフォリンと脂肪細胞の老化の関係を調べるために、2型糖尿病マウスモデルの内臓脂肪におけるp53依存性シグナルの活性化をp53の遺伝子欠損によって抑制すると、セマフォリン3Eの産生が減少し、脂肪組織の炎症が改善することがわかりました(図6)。逆に、脂肪細胞の老化を促進すると、セマフォリン3Eの産生が増加し、脂肪組織の炎症やインスリン抵抗性を引き起こしました。これらの変化は、セマフォリン3Eの阻害によって改善したことから、セマフォリン3Eは、脂肪細胞の老化と炎症を仲介している重要な分子であることが明らかとなりました(図7)。
 さらに、2型糖尿病患者の血中セマフォリン3Eが増加していたことから、ヒトの糖尿病においてもセマフォリン3Eによって誘導される脂肪組織の炎症がその病態に関与していることが考えられます(図8)。


<今後の展開>
 本研究により、糖尿病の発症に重要な脂肪細胞の老化と炎症を結ぶ鍵分子として、セマフォリン3Eが同定され、その阻害が2型糖尿病の新たな治療標的となりうることが示されました(図9)。
 p53はがん抑制遺伝子として有名で、発現量の低下や機能の喪失によってがんの発症を促進する可能性があります。一方、p53シグナルが過剰になると細胞は老化し、加齢に伴うさまざまな疾患への関与が予想されます。セマフォリン3Eは、p53シグナルの活性に直接影響を与えないため、その阻害は、がん化の危険性の少ない「加齢に伴うさまざまな疾患治療」につながる可能性があります。

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