2013/10/03 Category : 未選択 産総研と東北大、X線タルボ干渉法による新しい工業用X線非破壊検査法を開発 新しい工業用X線非破壊検査法の提案 ―これまで見えなかった欠陥がX線タルボ干渉法で撮影可能に― <ポイント> ・タルボ干渉計を用いることでこれまで見えなかった電子部品内の欠陥の撮影が可能に ・実験室レベルの小型X線源で撮影できるため生産現場での利用が容易 ・電子部品など工業製品の品質管理の高度化・効率化に期待 <概要> 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)生産計測技術研究センター【研究センター 長坂 本満】プロセス計測チーム 上原 雅人 主任研究員と、国立大学法人 東北大学【総長 里見 進】多元物質科学研究所【所長 河村 純一】の百生 敦 教授、矢代 航 准教授は、半導体パッケージの封止材(注1)中の空隙(ボイド)(注2)など、従来のX線非破壊検査法では見えなかった内部欠陥がX線タルボ干渉法(注3)により観測できることを実証した。 金属を透過できるX線は工業製品の非破壊検査に用いられている。しかし、工業製品は金属の他、セラミックスや樹脂などX線吸収係数(注4)の大きく異なる材料で構成されており、従来のX線吸収像(注5)では、樹脂などのX線吸収係数の小さい部材の検査は難しい。一方、X線位相(注6)像では樹脂などでも十分なコントラストの像が得られるが、撮影には多くの場合、大型の放射光光源(注8)を必要とし、生産現場での利用に難があった。X線タルボ干渉法では、実験室用のX線源でもX線位相像(注7)を撮影できる。これまで医療用としての開発が先行していたが、産総研は、電子部品の欠陥観察への利用を提案して実験を行った。その結果、これまでのX線非破壊検査では見えなかった、樹脂などの内部の欠陥を観測できることが分かった。品質管理の高度化などへの貢献が期待される。 なお、この成果の詳細は、JournalofAppliedPhysicsに2013年10月3日(米国東部時間)オンライン掲載される。 ※参考画像は、添付の関連資料を参照 <開発の社会的背景> 我が国の基幹産業である製造業の競争力を高めるためには、品質の高いものづくりと生産の高効率化が必須であり、これらに直結する非破壊検査は重要な技術である。特に、さまざまな部材が実装されている電子部品の内部構造はますます複雑化しており、検査技術もそれに対応する必要がある。 X線は非破壊検査に広く用いられているが、従来の検査で得られるX線吸収像だけでは、電子部品内部の金属配線や電極を検査できても封止材の検査はできない。封止材の検査には、一般に超音波を利用しているが、試料を水に浸す必要があり全数検査には難がある。 <研究の経緯> 産総研は、品質や生産性の向上、製品不具合の対処、安全確保、環境保全などに資する新たな計測技術を生産現場へ提供することを目指している。一方、X線タルボ干渉法は医療用としての研究・開発が先行しているが、今回、これを工業用非破壊検査法として応用の可能性を探るため、電子部品の撮影を試みた。 今回用いた、X線タルボ干渉法による高感度X線位相撮像装置は、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として、百生教授らによって開発され、東北大学に設置されたものである。今回の研究成果は、同プログラムの枠組み「開発成果の活用・普及促進」の中で、東北大学に設置された高感度X線位相撮像装置を利用して得られたものである。 <研究の内容> 図1にX線タルボ干渉法によりICパッケージを撮影した結果を示す。ICパッケージは素子、金属配線、電極の他、それらを外部から保護する封止材で構成されている。従来のX線非破壊検査法である(a)のX線吸収像では、金属配線や電極は見えるが、封止材の構造は全く見えない。一方、X線タルボ干渉法で得られた(b)のX線位相微分像では、封止材内部の多数のボイドが観察できた。このようなボイドは封止材の保護力を弱めると考えられるため、品質管理上、問題となるが、X線タルボ干渉法によって非破壊検査の高度化が可能になると考えられる。 ※図1は、添付の関連資料を参照 図2はパワーモジュール模擬試料をX線タルボ干渉法によって撮影した結果である。この試料は、アルミニウムの冷却板と窒化アルミニウムの絶縁板、シリコン基板を積層し、封止材で覆ったものである。あらかじめアルミニウムや封止材表面には傷を入れてある。これらの傷は(a)のX線吸収像では全く見えないが、(b)のX線位相微分像でははっきりと確認できた。また、試料内部のシリコン基板は(a)や(b)では全く確認できないが、(c)のX線散乱像では確認できた。窒化アルミニウム内にあらかじめ入れておいたクラック(注14)も、(a)や(b)では全く見えなかったが、(c)のX線散乱像では明瞭に見ることができた。 ※図2は、添付の関連資料を参照 <今後の予定> さらに厚みのある製品でも検査ができるように、X線の更なる高エネルギー化とそれに対応できるX線格子の作製を行う。また、欠陥などの配置や形態を立体的に把握できるように、コンピューター断層撮影(CT)のような立体画像の構築などの研究を進め、より生産現場のニーズに応えた装置を開発する予定である。 PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword