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東北大、多数の連続的な動作をグループ分けする細胞を発見

多数の連続的な動作をグループ分けする細胞を発見
選択肢を効率よく減らす賢い符号化原理


 東北大学大学院医学系研究科の虫明元(むしあけはじめ)教授(生体システム生理学)らのグループの中島敏(なかじまとし)助手は、サルを用いた実験で、多数の連続的な動作(順序動作)をグループに分けて効率よく符号化する神経細胞活動を発見しました。
 今回の研究成果から、随意的行動調節における脳の効率的な符号化原理が解明され、その事により脳の障害や治療へのアプローチ、ヒューマン-マシン・インターフェースなどへの応用の可能性が期待されます。
 この研究成果は、米国北米神経学会誌(Journal of Neuroscience)のオンライン版に9月26日(現地時間9月25日)に掲載される予定です。本研究は、科学技術振興機構「CREST」と文部科学省グローバルCOEプログラム(脳神経科学を社会へ還流する教育研究拠点)の支援を受けました。


【研究概要】
 東北大学大学院医学系研究科の虫明元 教授(生体システム生理学分野)らのグループは、前頭葉に複数存在する高次運動野と前頭前野の機能を長年研究してきました。今回の研究では、虫明教授グループの中島助手が、サルに行動課題を訓練し脳の神経細胞活動を調べることで、前補足運動野およびその後方の補足運動野の領域で、多数の組み合わせが可能な両手順序動作が細胞レベルでどのように効率よく符号化されているかを、サルに行動課題を訓練し、神経細胞活動を調べることで解明しました。さらに、得られた成果を説明する数理モデルを北海道大学の津田一郎教授と検討しました。
 まず、サルにTVモニターに提示した4つの色と、左手か右手の回内(手首の内側への回転運動)・回外(手首の外側へ回転運動)の4つの動作との対応関係を学習させました(図1)。つぎに、4つのうちいずれかの色を1つずつ指示信号(注1)として、動作開始信号(TVモニター中央の輝点)(注2)と同時に2回提示し(例:青→黄)、それぞれの色に対応した順序動作(例:左回内→右回内)を繰り返し行わせ、記憶させました。その後は、色という指示信号なしに、記憶した順序動作を動作開始信号だけ与えて行わせました。4つの動作を2回 任意に組み合わせるので、合計16通りの順序動作をサルは行いました(図1)。我々は、この動作順序の記憶情報がどのように符号化されているかを解明するために、この時に補足運動野、前補足運動野の細胞活動を調べました(図2)。すると多くの細胞は、個々の動作(例えば右手回内等)をそのまま符号化するのではなく、右手か左手か、あるいは、回内か回外か、という動作の属性によって個々の運動をグループ分けして、0か1かのような簡単な二進法的な符号化をしていました(図3)。さらに順序動作についても、たとえば「右手→左手」など、使用する手でグループ化した細胞、「回内→回外」など、動作の種類でグループ化した細胞が多数発見されました。一方で16通りのうちただ1つの順序動作、たとえば「右手回内→左手回外」だけに選択的な細胞は非常に少ないことがわかりました。
 脳において神経細胞が動作選択的に活動することが知られていますが、一方でそのような選択的な細胞が集まっても、指数関数的に増える組み合わせに対して、対応には限界が有ることも指摘されていました。ヒトは、何気なく多数の対象から1つを選択し行動をしていますが、通常7つ以上に選択肢が増えると、選択効率が急激に悪くなることが認知科学では知られています。ところが順序動作に関しては、沢山の選択肢があっても、私たちは混乱せずに1つの行動を選択できます。これをどう脳神経系が実現するか疑問でした。そして運動系においては、順序の組み合わせが指数関数的に増加(すなわち組み合わせの爆発(注3))をするので、どのように神経細胞が多数の組み合わせを区別するかは問題でした。
 今回の結果から、脳は可能な動作群を属性によってグループ分けし、順序も属性に基づいてグループ表現することで問題を軽減できることが示唆されました(図4)。計算論的に検討すると、個々の細胞が多数の順序から1つを選択する符号化よりも、属性に基づいて細胞をグループ分けして順序を符号化する方が、圧倒的に効率が良く誤りも減らせることが示されました(図4および参考図)。また、計算モデルによって、一つ一つの細胞が関与する選択肢の数を減らすことで、細胞活動の誤動作や特定の符号化をしている細胞自体を検索する時間を減らせることを推定できました。脳はひとつひとつの細胞の負担を減らす代わりに、異なる属性に基づいてグループ符号化をする細胞が幾つか一緒に活動することで、効率的な符号化を図っていることがわかりました。
 今回の研究から、多数の行動選択肢に直面したとき、個別にされた運動をそのまま符号化するのでなくグループとして選択することは、脳が自発的に独自の選択肢を創り出している事を示唆します。高次運動野に属する内側前頭葉のこのような機能の解明は、随意運動の階層性を理解する上で重要な貢献と言えます。


 ※用語解説・参考資料は、添付の関連資料を参照


【論文題目】
 Two-dimensional representation of action and arm-use sequences in the pre-supplementary and supplementary motor areas
 Toshi Nakajima,Ryosuke Hosaka,Ichiro Tsuda,Jun Tanji and Hajime Mushiake
 邦訳:前補足運動野と補足運動野では動作順序と手の使用順序を2次元で表現する。中島敏 保坂亮介 津田一郎 丹治順 虫明元
 本研究結果はJournal of Neuroscience オンライン版に9月25日付け(日本時間9月26日)に掲載されます。

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