2013/10/15 Category : 未選択 東北大、肺の機能維持に寄与する転写因子を同定 肺の機能維持に寄与する転写因子の同定 ―遺伝子発現システムの破綻による肺胞蛋白症の発症― 【概要】 東北大学大学院医学系研究科 細胞生物学講座生物化学分野の五十嵐和彦教授と内科病態学講座呼吸器病態学分野の貫和敏博名誉教授の共同グループは、肺の恒常性維持に必須の遺伝子発現システムを発見し、その異常が肺胞蛋白症の発症に関わることを見いだしました。 人を含む多くの生物において、肺から空気中の酸素を取り込む機能を支えているのが、肺に存在する肺胞サーファクタントという物質です。しかし、この肺胞サーファクタントが過剰に溜まると、呼吸困難などを症状とする肺胞蛋白症という病気になります。研究グループは、肺胞サーファクタントの恒常性維持に関わる遺伝的システムを解明し、肺胞蛋白症の原因の一端を発見しました。 本研究は米国の医学専門誌Journal of Experimental Medicineに掲載されます。 【研究内容】 肺は約3億個の小さな袋(肺胞(注1))からなり、約70m2の表面積を有し、この肺胞から酸素は取り込まれます。肺胞には表面張力がかかり、そのままだと潰れてしまいますが、肺胞サーファクタント(注2)という物質で肺胞の表面が被われることで潰れないようになっています。肺胞サーファクタントは肺胞の上皮細胞から分泌され、肺胞の腔内に存在する貪食細胞(肺胞マクロファージ(注3))が分解することで、量が適切な範囲になるよう調節されています。肺胞蛋白症という病気では肺胞サーファクタントのバランスが崩れ、大量の肺胞サーファクタントが肺胞腔内に溜まり、呼吸不全を引き起こします(図1)。肺胞蛋白症は、主に肺胞マクロファージの異常により発症すると考えられていますが、その発症機構には多くの謎が残っていました。 転写因子(注4)Bach2は免疫において必須の役割を有することが知られています。Bach2の遺伝子を欠損するマウスを作成したところ、正常に生まれ成長するものの、徐々に肺胞蛋白症を発症し、1年程度で全て死んでしまうことが判明しました。さらに、Bach2は肺胞マクロファージで働き、Bach2が欠損した肺胞マクロファージでは、肺胞サーファクタントの成分である脂質の処理が特異的に低下していることが明らかになりました。Bach2が制御している遺伝子群の発現が乱れることで肺胞蛋白症が発症すると考えられました。 肺は常に外気と接しており、生体防御の最前線であると言っても過言ではありません。マクロファージは免疫の要であり、分布する臓器ごとにさまざまに分化し、肺胞マクロファージも肺胞サーファクタントの処理や免疫など、特別な機能を持っています。しかしながら、肺胞マクロファージが特定の機能を獲得する仕組みはよく理解されていません。今回の発見は、肺胞マクロファージで働く遺伝子ネットワークの制御因子を見つけたものです。これにより、肺胞蛋白症の病因解明や新たな治療方法の開発が進むことが期待されます。 本研究は、文部科学省科学研究費補助金、科学技術振興機構、東北大学医学系グローバルCOEプログラム「Network Medicine創生拠点」、武田科学振興財団により支援されました。 PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword