2013/10/18 Category : 未選択 東大、磁気共鳴機能画像法で計測精度の向上につながる計測信号の「時間ゆらぎ」を発見 計測信号の時間ゆらぎの発見によりヒト脳計測の精度が飛躍的に向上 ―脳情報処理の解明および脳神経活動・脳血管状態の分離観測による医療応用へ― 1.発表者 東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻 准教授 渡辺正峰 2.発表のポイント ◆ヒトの脳を傷つけることなく外側から計測できる手法の中で最も空間解像度の高い磁気共鳴機能画像法(fMRI)(注1)において、計測精度の飛躍的な向上につながる計測信号の「時間ゆらぎ」(注2)を発見した ◆「時間ゆらぎ」を踏まえた解析によって、神経活動により近い信号成分を高い信頼性で検出できるようになり、現在は時間的に秒レベル、空間的にはミリレベルの精度をもつfMRIの測定が、原理的には100ミリ秒レベル、100マイクロメートルレベルの精度で可能となる ◆本成果を現在のfMRI計測に用いることにより、言語・論理・直感などヒトならではの機能を司る脳の微細構造が観測可能となり、高次脳機能の解明への期待が高まる ◆本研究成果により、fMRIを用いて脳の神経活動と血管状態を分離して同時に観測することが可能となり、医療への応用が期待される 3.発表概要 近年のヒトの脳機能に関する重大な発見の多くは、磁気共鳴機能画像法(fMRI:functional Magnetic Resonance Imaging)(注1)を用いた成果によるものと言えます。fMRIは脳を傷つけることなく外側から(非侵襲的に)脳内の酸素濃度の変化を計測して、神 経の活動を観測する装置です。しかし、神経活動はミリ秒単位で起こる一方で、現在のfMRIは秒レベルの信号を観測しているため、時間的な精度(時間解像 度)の向上が期待されています。また、fMRIは数ミリレベルの空間的な精度(空間解像度)ももちますが、脳の微細な構造を理解する上では空間的な解像度 の向上も欠かせません。 現在のfMRIの時空間解像度の限界には、観測している信号の種類が関係しています。神経活動の上昇に伴う酸素 濃度の変化を反映する信号には「初期酸素濃度下降成分」と「後期酸素濃度上昇成分」という2つの種類があります。初期酸素濃度下降成分は鋭く変化する信号 で神経活動を直接的に反映しています。一方で後期酸素濃度上昇成分は緩やかに変化する信号で、神経活動を受けての脳血管系の反応を捉えたものです。現在の fMRI計測は鋭く変化する初期酸素濃度下降成分の観測が困難なため、緩やかに変化する後期酸素濃度上昇成分に基づいており、初期酸素濃度下降成分を抽出 できるようになれば、fMRIの時空間解像度の向上が見込めます。 今回、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻の渡辺正峰准教 授らは、fMRIの後期酸素濃度上昇成分が数秒程度の「時間ゆらぎ」(注2)をもつことを発見し、これが初期酸素濃度下降成分の観測を困難にしていること を突き止めました。そして、「時間ゆらぎ」を踏まえた新たな解析手法(注3)を開発し、「初期酸素濃度下降成分」を高い信頼性をもって抽出することに成功 しました。「時間ゆらぎ」を利用した解析により、原理的には100ミリ秒の時間遅れ、そして100μm(マイクロメートル)の空間解像度(注4)まで測定 限界を引き上げられるようになります。本研究の成果により、fMRIを用いてより時空間解像度の高い脳機能の測定が可能になれば、これまでの数ミリ単位の 計測から得られた「脳活動地図」を越えて、ヒトの脳の微細機能構造に迫ることにより、言語・論理・直感などの高次脳機能の解明へとつながります。また、神 経活動と脳血管状態を同時に推定することが可能となることにより、非侵襲の医療診断などへの応用が期待されます。 PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword