2013/12/27 Category : 未選択 理化学研究所など、関節リウマチに対するゲノム創薬手法を開発 関節リウマチに対するゲノム創薬手法を開発-ゲノム創薬の新たな可能性を発見-<ポイント> ・10万人以上のビッグデータ解析で関節リウマチの101個の感受性遺伝子領域を同定 ・網羅的なデータベース解析を通じて関節リウマチの新たな疾患病態が判明 ・新たなゲノム創薬手法を見いだし、関節リウマチに対する新規治療薬候補を発見<要旨> 理化学研究所(理研、野依良治理事長)は、全世界の10万人以上を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)[1]を行い、関節リウマチの発症に関わる101個の感受性遺伝子領域を同定しました。また、新たなゲノム創薬手法を見いだし、関節リウマチの治療における新規治療薬候補を同定しました。これは、理研統合生命医科学研究センター(小安重夫センター長代行、久保充明副センター長)自己免疫疾患研究チームの山本一彦チームリーダーと、統計解析研究チームの岡田随象客員研究員、および東京大学、京都大学、東京女子医科大学、ハーバード大学を中心とする国際共同研究グループ[2]による成果です。 関節リウマチは、関節の炎症と破壊をもたらす自己免疫疾患[3]であり、遺伝的要因が発症に関与することが知られています。これまでに国内外の研究グループによってGWASが実施され、関節リウマチの発症に関与する感受性遺伝子領域が数多く報告されています。 国際共同研究グループは世界中のGWASのデータを統合し、アジア人および欧米人を含む10万人以上を対象としたビッグデータ解析[4]を実施しました。その結果、新たに発見した42領域を含む、計101領域の感受性遺伝子領域を同定しました。次に、得られた感受性遺伝子領域内の遺伝子と多様な生物学的データベースとの網羅的な照合を行いました。その結果、関節リウマチの感受性遺伝子の一部が、原発性免疫不全症候群[5]や白血病[6]の感受性遺伝子と共通していることや、関節リウマチの病態が制御性T細胞[7]や多様なサイトカインシグナル[8]によって制御されていることが判明しました。さらに、GWASで同定した疾患の感受性遺伝子領域内の遺伝子と創薬データベース上のターゲット遺伝子のつながりを調べ、候補となる治療薬を探すという、新しいゲノム創薬手法を見いだしました。その結果、関節リウマチの感受性遺伝子がタンパク質間相互作用ネットワーク[9]を介して、関節リウマチの治療薬のターゲット遺伝子とつながっていることが明らかになりました。また、他の病気に対する既存の治療薬の中で、関節リウマチの感受性遺伝子をターゲットとしているものがあり、それら既存の治療薬を関節リウマチの治療に適応拡大できる可能性を示しました。実際に、乳がんなどの治療に使われているCDK4/6阻害薬[10]が有力な治療薬候補として同定されました。 本研究は、厚生労働省(創薬基盤推進研究事業)創薬バイオマーカー探索研究班(班長 桃原茂樹)とオーダーメイド医療実現化プロジェクトの成果を活用しました。成果は、英国の科学雑誌『Nature』のオンライン版(12月25日:日本時間12月26日)に掲載されます。<背景> 関節リウマチは、関節の炎症と破壊をもたらす自己免疫疾患で、国内に約70~80万人の患者がいると推定されています(平成23年厚生科学審議会報告書)。関節リウマチの発症には、喫煙などの環境因子に加えて、多くの遺伝的要因が関わっています。個人間におけるゲノム配列の違い、すなわち遺伝子多型[11]が関与していることが知られており、国内外で多くのゲノムワイド関連解析(GWAS)が実施され、関節リウマチの発症に関与する多数の感受性遺伝子領域が同定されてきました。 しかし、これまでは特定の人種を対象に、各研究機関で別々に実施したものが大半でした。そのため、それらのデータを統合したビッグデータ解析を行うことができれば、より多くの関節リウマチ感受性遺伝子領域が同定され、病態の解明や新薬の開発が進むと期待されていました。<研究手法と成果> 国際共同研究グループは、世界の有力大学・研究機関の協力を得て、これまで実施された全ての関節リウマチのGWASデータを統合し、ビッグデータ解析を実施しました。アジア人および欧米人集団を含む10万人以上のサンプルと、約1,000万の一塩基多型(SNP)[11]で構成されたビッグデータを対象とした解析の結果、101個の遺伝子領域に含まれる一塩基多型が関節リウマチの発症に関与していることが明らかになりました。このうち42領域は新規の発見です(表1、図1)。また、これらの遺伝子領域に含まれる一塩基多型のうち、発症しやすい遺伝子変異を持つ人は、それら遺伝子変異を持たない人に比べ、1.1~1.5倍程度、関節リウマチにかかりやすいことが分かりました。 次に、関節リウマチの感受性遺伝子領域内の遺伝子と多様な生物学的データベースとの網羅的な照合を行いました。その結果、関節リウマチの感受性遺伝子の一部が、原発性免疫不全症候群や白血病の感受性遺伝子と共通していることが明らかになりました。また、制御性T細胞のDNAにおいて遺伝子発現機構を制御している領域と、関節リウマチの感受性遺伝子領域に重複が認められることや、多様なサイトカインシグナル(インターロイキン10、インターフェロン、顆粒球単球コロニー刺激因子など)が関節リウマチの発症に関与していることが明らかになりました(図2)。 さらに、国際共同研究グループは、創薬データベースに登録されたさまざまな疾患の治療薬のターゲット遺伝子の情報を整理し、GWASで得られた疾患の感受性遺伝子とのつながりを検討する、新しいゲノム創薬手法を考案しました。その結果、関節リウマチの各感受性遺伝子が、タンパク質間相互作用ネットワークを介して、関節リウマチの治療薬における治療ターゲット遺伝子とネットワークを形成していることが明らかになりました(図3)。また、既存の他の病気に対する治療薬の中には、関節リウマチの感受性遺伝子をターゲットとしているものがあり、それらを関節リウマチの治療に適応拡大できる可能性を示しました。実際に、乳がんなどの治療に用いられているCDK4/6阻害薬を有力な治療薬候補として同定しました。<今後の期待> 関節リウマチの治療方法は近年、飛躍的な進歩を遂げていますが、既存の治療方法では十分な効果が得られない場合や、副作用が生じて治療を続けられなくなる場合もあります。今回の研究で明らかになった関節リウマチの感受性遺伝子領域内の遺伝子や疾患病態を考慮することで、より効果的で、より副作用の少ない、新たな治療薬の開発に結びつくと考えられます。また、今回見いだしたゲノム創薬手法を関節リウマチ以外の疾患にも適用することで、さまざまな疾患に対する新薬の開発が加速する可能性があります。<原論文情報> ・Okada et al.”Genetics of rheumatoid arthritis contributes to biology and drug discovery”Nature, 2013 DOI:10.1038/nature12873<発表者> 独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター 自己免疫疾患研究チーム チームリーダー 山本 一彦(やまもと かずひこ) 統合生命医科学研究センター 統計解析研究チーム 客員研究員 岡田 随象(おかだ ゆきのり) (現所属:東京医科歯科大学テニュアトラック講師) PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword