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NIMSとJST、ガラス基板上で配向を自在に制御したペロブスカイト酸化物結晶薄膜の成長に成功

ガラス基板上で配向を自在に制御したペロブスカイト酸化物結晶薄膜の成長に成功
-2次元ナノシートを用いることで、単結晶基板が不要な高品位薄膜配向制御を実現-


<概要>
 1.独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田資勝)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(拠点長:青野正和)の佐々木高義フェロー、柴田竜雄博士研究員らの研究グループは、ガラス等の任意の基板の上に、重要な機能性材料であるペロブスカイト型酸化物の高品質薄膜を望みの方向に向けて配向成長1)させることを可能とする新技術を開発した。

 2.我々の身の回りにあるエレクトロニクス、オプトエレクトロニクスなどの先端デバイスの多くでは、様々な機能性材料の結晶薄膜を利用した部品が組み込まれ、重要な働きを担っている。例えばチタン酸バリウムに代表されるペロブスカイト型の酸化物2)は、強誘電性、圧電性など有用な性質を示す代表的な機能性材料であり、MEMS、センサー、メモリ等への応用が進んでいる。これらの特性は、結晶の方向や結晶性・配向度等に強く依存するため、その薄膜成長のコントロールが重要な課題となっている。一般に結晶薄膜の高品位・配向成長を達成するためには、構造がよく似た単結晶基板3)を用いたエピタキシャル成長4)が利用されているが、コストやサイズに制約があり、その広範な展開に足かせとなっていた。そのためガラスやプラスチックなど安価な汎用基板上で高品位・配向成長を可能とする技術の開発が待ち望まれていた。

 3.研究グループは層状化合物を層1枚にまでバラバラに剥離して得られるグラフェン5)類似物質である無機ナノシート6)のライブラリの中から、成長させたい方位の構造に適合した3種類の酸化物ナノシートを選択して、溶液プロセスを用いてガラス等の基板表面に隙間、重なりが無いように配列させ、厚さ約1ナノメートルの極限的に薄い下地(シード)層を形成した。その上にペロブスカイト型酸化物結晶薄膜を気相プロセスにより堆積させた結果、それぞれのナノシートの持つ2次元格子との構造整合に対応して、ペロブスカイト結晶の主要な利用面方位である(100),(110),(111)方向に配向制御して成長させることに成功した。この際、通常の単結晶基板表面と異なり、ナノシートでは未終端の結合がないため、より自由度のある薄膜成長が可能となる優位性を有することも明らかとなった。得られた薄膜は無配向の薄膜と比べて2倍以上の誘電性能を示し、本技術の有効性が機能面からも実証された。

 4.本研究成果はいわば「模様を持ったナノレベルの薄さの壁紙」ともいえるナノシートで基板表面を被覆することで、重要な機能性材料であるペロブスカイト型酸化物薄膜を様々な方向に配向成長制御することを可能としたものであり、これまで不可能であったガラスやプラスチックといった汎用基板を利用できること、ナノシートの基板表面の被覆は室温溶液プロセスで行うことができることから、安価で普遍性の高い新技術といえ、MEMS、センサーなどへの応用技術に大きな波及効果、技術革新をもたらす可能性がある。

 5.本研究成果は、独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「ナノ科学を基盤とした革新的製造技術の創成」研究領域(研究統括:堀池靖浩)における研究課題「無機ナノシートを用いた次世代エレクトロニクス用ナノ材料/製造プロセスの開発」(研究代表者:佐々木高義)の一環で得られたもので、王立化学会誌「Journal of Materials Chemistry C」に近日掲載予定である。


<研究の背景>
 青色発光ダイオードや強誘電体メモリ、透明導電膜など我々の生活を支えるオプトエレクトロニクスやエレクトロニクスデバイスにおいて、様々な機能性結晶薄膜がその高度な機能を実現する上で中心的役割を果たしている。高性能デバイスを製作するためにはこれら結晶薄膜の構造や配向度を精密に制御して、材料の持つ機能を限界まで引き出すことが必須となっており、例えば機能性結晶の代表格でありMEMSなどに応用が期待されるチタン酸バリウムベースの強誘電体結晶(BaTiO3,ペロブスカイト型構造)では構造が整合する別種のペロブスカイト酸化物や酸化マグネシウムの単結晶基板を用い、その上でのエピタキシャル成長を利用することで高結晶性・高配向性の結晶を成長させてデバイスが作製されている。しかしながら単結晶基板は高価であり、そのサイズに制限があるうえに難加工性であること、さらには目的とする配向に合致した構造を持つものが必ずしも見つからない場合も多いなどの様々な問題がある。
 以上のような背景を踏まえて、安価で大面積のガラスや金属テープなどの基材上で、単結晶基板と同様な高品位配向成長を実現したいという強い技術的ニーズが存在する。しかしながらこれらの汎用基材はガラスなど結晶質ではない材質が多いうえに、結晶質の基板であっても配向に適した構造を持っていない場合がほとんどであるため、結晶薄膜を配向成長させることは不可能であった。そこでその表面に目的とする結晶の配向性に適した構造を持ったシード層とよばれる下地層を作製し、このシード層の構造を鋳型として良質な結晶を成長させる方法が多く検討されてきた。しかし、平滑で結晶性の高い良質なシード層を作製するには、高価で大掛かりな装置を必要としたり、工程中に熱処理が必要であったりと様々な制限が存在し、ごく一部の例を除いて満足すべき結果は得られていなかった。
 もしガラスなどの汎用基板上で、ペロブスカイト型酸化物結晶薄膜の自在な配向成長制御が可能となれば、その応用範囲の広さから考えて、大きな技術革新につながると期待されていた。

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