2013/09/03 Category : 未選択 帝国データバンク、長寿企業の実態調査結果を発表 特別企画:長寿企業の実態調査(2013年) 創業100年以上の「長寿企業」、全国に2万6,000社 ~2013年は1,410社が「長寿企業」の仲間入り~ <はじめに> 安倍政権が日本経済の再生に向けて掲げたキーワードのひとつに、「新陳代謝」がある。「日本再興戦略」において、産業および企業の「新陳代謝」を促進することにより、民間の活力を最大限に引き出すとした。幸いなことに日本には、この「新陳代謝」の良き手本となる企業が多く存在する。本調査で取り上げる「長寿企業」がそれだ。戦争や災害に加え、市場環境の変化や事業承継など、100年以上の歴史のなかで内外の様々な困難を乗り越え、変化に対応してきた「長寿企業」から学ぶべきことは多い。 帝国データバンクでは、企業概要ファイル「COSMOS2」(144万社収録)をもとに創業100年以上の「長寿企業」(個人、各種法人含む)を集計し、業種別、規模別、創業時期別、都道府県別に分析した。 ※各企業の業歴については、創業月まで判明しない場合もあるため、一律で「2013年-創業年=業歴」とした (例)1900年12月創業の場合→(2013-1900)=創業113年 ※「COSMOS2」は2013年8月時点のデータを使用 <調査結果(要旨)> 1.業歴が100年以上の「長寿企業」は、2万6,144社判明した。このうち、2013年に新たに「長寿企業」の仲間入りを果たしたのは1,410社 2.業種別に見ると、最も多かったのは「清酒製造」で707社判明した。以下、「貸事務所業」(613社)、「酒小売」(596社)と続くほか、「呉服・服地小売」、「婦人・子供服小売」など消費財関連の小売業が目立つ 3.規模別に見ると、「従業員10人未満」が16,287社で62.3%、「年商10億円未満」が21,431社で82.0%と、比較的小規模な企業の割合が大きい 4.明治時代以降(1868年以降)の創業は23,384社で89.4%を占めた。江戸開府前(1602年以前)の創業は141社 5.都道府県別の「長寿企業輩出率」を見ると、「京都府」の3.96%が最高。以下、「山形県」(3.72%)、「島根県」(3.60%)、「新潟県」(3.58%)がこれに続く 1.全国の長寿企業―2013年に創業100年を迎えたのは1,410社― 創業から100年以上が経過した「長寿企業」(個人営業、各種法人含む)は、全国に2万6,144社存在することが判明した。 このうち、2013年が創業100年にあたる、新たに「長寿企業」の仲間入りを果たした企業(以下、「創業100年企業」とする)は1,410社を数える。主な企業として、住友化学や岩波書店、トンボ鉛筆などが顔を揃えた。 *参考資料は添付の関連資料「参考資料」を参照 2.業種別―「清酒製造」が最多、消費財関連も目立つ― 業種別に見ると、最も多かったのは「清酒製造」の707社。「長寿企業」に清酒製造業が多いのは、人々に親しまれ、産業として定着した歴史が古いこと、参入障壁が高いために新規参入が比較的少なく、安定した経営を続けやすかったことが理由として挙げられる。 続いて、2位となったのは「貸事務所業」の613社。これは、もともと本業とは別に、所有していた土地などの遊休資産を貸し出して営業外利益を稼ぎ出していたものが、時代の経過とともに本業になりかわっていったケースが多く、近年「長寿企業」に占める割合が増加傾向にある。資産を多く有する長寿企業ならではと言えるだろう。 9位の「ガソリンスタンド経営」も「長寿企業」の特徴が現れている業種の好例である。「ガソリンスタンド経営」に分類されている企業のほとんどは創業当初からガソリンを扱う事業を営んでいたわけではない。もともとは食用油や照明油の小売業者が、時代と市場環境の変化に対応して、業態変化したものが大半である。言い換えれば、こうした変化への柔軟な対応が、長寿の要因なのかも知れない。 このほかの業種では、「呉服・服地小売」、「婦人・子供服小売」といった生活必需品や消費財関連の小売業が目立ち、それぞれの地域経済に根ざして業歴を刻んできた「長寿企業」の姿が浮き彫りになった。 *参考資料は添付の関連資料「参考資料」を参照 3.規模別―大部分が中小・中堅規模の企業― 規模別に構成比を見ると、従業員数では「10人未満」が16,287社で全体の62.3%を占める。また、年商別では「10億円未満」が21,431社で82.0%となった。資本金別で見ると、「1億円以上」の企業の割合は1,901社で7.3%にとどまっている。 これらから、「長寿企業」は全体的に中小・中堅規模の企業の比率が大きいことがわかった。「創業100年企業」に限って見ても、従業員数「10人未満」が62.0%、年商「10億円未満」は83.3%を占めるなど、傾向に大きな相違はない。 *参考資料は添付の関連資料「参考資料」を参照 4.創業時期別―江戸開府以前の創業は141社― 「長寿企業」の創業時期を見ると、「明治時代以降(1868年以降)」の創業が23,384社を数え、「長寿企業」全体の89.4%を占めた。 「江戸時代(1603年~1867年)」の創業は、2,619社で全体の10.0%となった。400年以上の業歴を誇る、「江戸開府前(1602年以前)」の創業は、141社で全体の0.5%であった。 *参考資料は添付の関連資料「参考資料」を参照 5.都道府県別―長寿企業輩出率は「京都府」が最高― 都道府県別の「長寿企業輩出率」(長寿企業数÷全企業数)を見ると、「京都府」が3.96%で最も高い。第二次世界大戦の被害が比較的軽微であったことに加え、寺社仏閣の支援や文化的な風土により、伝統工芸を守り育てる環境があったことなどが「長寿企業」の存続に大きく寄与した。 2位以下にも「山形県」(3.72%)、「島根県」(3.60%)、「新潟県」(3.58%)など戦争被害が比較的少なかったことに加えて、古くから交易により商業や地場産業が栄えた地域が連なる。 社数だけで見ると最も多いのは「東京都」の2,469社だが、東京都は企業の母数も多く、「長寿企業輩出率」で見ると1.21%と全体の平均(1.82%)を下回った。また、「沖縄県」の「長寿企業」が少ないのは、第二次世界大戦で唯一戦場となり甚大な戦禍を被ったことが背景にあると見られる。 *参考資料は添付の関連資料「参考資料」を参照 6.まとめ 調査の結果、全国には創業100年以上の「長寿企業」が2万6,144社存在することがわかった。これらの企業は、存在そのものがそれぞれの根ざした地域経済の歴史であり、ひいては日本の財産であると言える。しかし、これらの企業も、創業以来その姿を変えずに生き残ってきたわけではない。100年以上の歴史を積み上げるためには、多くの「新陳代謝」を繰り返す必要があり、その過程では「貸事務所業」や「ガソリンスタンド経営」に見られるように、業態が大きく変化したものも少なくない。 安倍政権が企業の「新陳代謝」を進める過程においては、「時代遅れになった企業の淘汰」という事態も想定されうる。今後、多くの企業が変化する時代や環境に柔軟に対応し、より活力ある日本経済を築くために、先達である「長寿企業」の存在は多くの企業にとって良き手本となるのではないだろうか。 PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword