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東京インスツルメンツなど、「2次元多共焦点ラマン顕微鏡」の実用化に成功

カメラのように一瞬で画像が取得できる
「2次元多共焦点ラマン顕微鏡」の実用化に成功



 JST先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として、株式会社東京インスツルメンツ、学習院大学、早稲田大学の開発チームは、カメラのように一瞬で画像が取得できる「2次元多共焦点ラマン顕微鏡」を世界で初めて実用化しました。
 共焦点ラマン顕微鏡は、ラマン分光法(1)を利用してレーザー光を物質に照射したときに発生する微弱なラマン散乱光を検出し、物質種の同定や化学結合の状態、分子や結晶の構造などの分析に使われています。また、共焦点光学系(2)を活かして透明な試料の内部までも非破壊で観察できるため、生きた細胞の新しい評価・観察手法としても注目され始めています。一般的なラマン顕微鏡は、一点に集光したレーザー光で測定したい面を走査してラマン信号を測定し、画像として描き出す必要があります。そのため、描画には10時間以上かかる場合もありました。最近では、レーザー光をライン状にして、より広範囲を走査する高速なラマン顕微鏡も普及しつつあります。しかし、一瞬でカメラのようにラマン画像を取得することはできないため、細胞内物質の代謝の様子や、結晶構造や化学反応の変化をリアルタイムに観察することができませんでした。
 開発チームは、レーザーや試料を全く動かさず、一瞬でラマン画像を取得できる「2次元多共焦点ラマン顕微鏡」の実用化に成功しました。開発した顕微鏡は、レーザー光を21×21点、合計441点の格子点状(2次元)に分割して試料に照射して各点からのラマン散乱光を同時に測定し、441ピクセルの高空間分解能ラマン画像を1秒で取得できます。同じ画像を従来の走査方式の顕微鏡で観察するには、441秒(約7分)かかっていました。さらに、透明な試料であれば、その断面も測定できます。この成果は、長時間レーザーを照射することができない細胞などが時間的に変化する様子を、内部までリアルタイムで非破壊に観察可能とするものです。
 本装置は、株式会社東京インスツルメンツが2013年9月より受注販売を開始します。また、2013年9月4~6日に開催される「JASIS 2013」の同社ブースにて、実機の展示を行います。

 本開発成果は、以下の事業・開発課題によって得られました。
  事業名:研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)
  ●機器開発タイプ
   開発課題名:「生細胞活性可視化診断用ラマン分光顕微鏡の開発」
   チームリーダー:濱口 宏夫(*)(採択時:東京大学大学院 理学系研究科 教授)
   開発期間:平成20~23年度
   担当開発総括:澤田 嗣郎(東京大学 名誉教授)
  ●実証・実用化タイプ
   開発課題名:「2次元多共焦点ラマン分光顕微鏡の実用化開発」
   チームリーダー:河村 賢一(株式会社東京インスツルメンツ 商品開発室 室長)
   開発期間:平成23~25年度(予定)
   担当開発総括:尾形 仁士(三菱電機エンジニアリング株式会社 社友)
 JSTはこのプログラムで、創造的・独創的な研究開発に資する先端計測分析技術・機器およびその周辺システムの研究開発を推進します。

 *チームリーダー名の正式表記は添付の関連資料を参照


<開発の背景と経緯>
 ラマン分光法は、古くから物質や分子の振動スペクトルを観測する手段として使われ、主に学術的な用途で分子構造、化学結合状態の評価に使われてきました。近年になり、光学顕微鏡技術との融合によって、数百nmといった局所の分光が可能になると同時に、データを画像化して直感的に把握できるようにするイメージング技術も普及したことで、工業製品の開発や検査(異物の検出など)や、さらに最近ではバイオテクノロジー、医療、創薬開発といった全く新しい分野でも使われるようになっています。特に細胞内物質の測定については、非侵襲で標識がいらない新しい観察手法としてラマン顕微鏡に注目が集まっており、ラマン分光法による病気診断の可能性など新規な研究が盛んに行われるようになっています。
 その一方で、ラマン顕微鏡は非常に微弱なラマン散乱光を検出しなくてはならないため、その測定時間の長さが大きな課題となっています。現在、最も普及している一般的な共焦点ラマン顕微鏡の場合、試料又はレーザーを走査してラマン画像を描くため、測定条件によっては測定時間が10時間以上にも及ぶことも珍しくありません。最近では、高速化のためにライン状(1次元)のレーザービームを走査するラマン顕微鏡が登場していますが、やはり2次元イメージを得るためには試料又はレーザーの走査が必須となり、カメラのように一瞬で2次元ラマン画像を得ることはできません(図1)。
 株式会社東京インスツルメンツは平成23年より学習院大学・岩田耕一教授、早稲田大学・濱口宏夫教授と共同で、ラマン画像を一瞬で観測できる、2次元多共焦点ラマン顕微鏡の製品化を目指して開発を行いました(図2)。本開発は、JST 先端計測分析技術・機器開発プログラム(機器開発タイプ)において、濱口宏夫教授を中心に世界で初めて実証実験に成功した2次元多共焦点ラマン顕微鏡の試作機と関連特許(3)を基にして、高性能化と実用化開発を行いました。また濱口宏夫教授のグループは、本開発においても2次元多共焦点ラマン顕微鏡を使って生きた細胞の観測を行い、その有用性を報告しています。
 今回開発したラマン顕微鏡は、レーザー光を21×21点、合計441点の格子点状(2次元)に分割して試料に照射し、各点からのラマン散乱光を同時に測定します(図1)。そのため、試料やレーザー光を走査することなく、一瞬でラマン画像が得られ、逐一変化する化学反応や、レーザー光で損傷しやすい細胞の観察を高速に行うことができます。


<開発の内容>
 今回開発した2次元多共焦点ラマン顕微鏡は、レーザー光を特殊なビームスプリッターで21x21点、合計441点の格子点状(2次元)に分割して試料に集光照射します(図3)。100倍の対物レンズを使った場合、500nm間隔で正確に並んだ21x21点(観測視野10×10μm)のビームが試料に一斉照射され、各点からのラマン散乱光は、共焦点光学系を経て全て同時に分光器に導かれます。しかし、分光器に入射する光は、必ず点、又は線状でなければスペクトルを観測できません。そのため2次元多共焦点ラマン顕微鏡では、2次元に配列した21x21点のラマン散乱光を1次元へ変換するために、超高密度・高精度次元変換バンドル光ファイバーを新たに開発しました(図4)。バンドルファイバーの入射側は21x21本、分光器に接続される出射側は縦2列(220+221本)にファイバーが配列しています。各測定点のラマン散乱光は入射側から対応するファイバーに入射します。出射側を縦2列とすることで、CCD検出素子の受光面には、左右にそれぞれ221本と220本のスペクトルが投影され、合計441本のスペクトルの同時観測を可能にしています。また、今回新たに開発した低収差・高効率のイメージング分光器を使うことで、スペクトル同士の情報が混じり合うこと(クロストーク)を防ぎ、高いコントラストのスペクトル像が得らます(図5)。超高密度・高精度次元変換バンドル光ファイバーを使うことで、21x21測定点からの散乱光を空間的に分離し、さらにスペクトル間のクロストークを起こさずに観測することができるため、正確なスペクトル観察と高精度のラマン画像が可能となりました。今回用いた次元変換バンドル光ファイバーは、外径65μmの細径光ファイバーが70μm間隔で2次元的に高精度に並ぶ画期的なバンドルファイバーです。
 また、2次元多共焦点ラマン顕微鏡の共焦点光学系を活かすことで、透明試料内部を立体的に観察することができます。さらに、ラマン散乱光検出の妨げとなる蛍光の影響を抑制する効果も得られます。


<まとめ>
 一瞬で2次元ラマン画像を描画できる2次元多共焦点ラマン顕微鏡は、従来のラマン顕微鏡では困難であった逐一変化する化学反応や物質、生きた細胞などの変化をリアルタイムで立体的に観測できるため、これまでの常識を越えた新しい研究や開発に寄与すると期待されます。
 本装置は、株式会社東京インスツルメンツより「多共焦点ラマン顕微鏡Phalanx-R」として、研究開発機関向けに2013年9月より受注販売を開始します。

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