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慶大、皮膚の遺伝病/長島型掌蹠角化症の原因遺伝子を同定

皮膚の遺伝病、長島型掌蹠(しょうせき)角化症の原因遺伝子を同定
病態解明と治療法開発へ
~日本人によって36年前に初めて報告された疾患の病因を明らかに~



 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室の久保亮治専任講師を中心とした、慶應義塾大学医学部・国立成育医療研究センターらの共同研究チームは、遺伝性掌蹠(しょうせき)角化症の1つである長島型掌蹠角化症の原因遺伝子変異が、SERPINB7の変異であることを突き止めました。
 この病気は、乳児・幼児期から手の平・足の裏の皮膚が赤みをおびて分厚く固くなってくる病気です。1977年に日本人皮膚科医、長島正治により初めて報告され、現在では報告者の名前を冠して長島型掌蹠角化症と呼ばれています。これまで、この病気の原因は全くわかっていませんでした。
 研究チームは次世代シーケンス技術を用いて、解析に協力していただいた長島型掌蹠角化症患者とその両親のゲノムDNAを解析し、蛋白分解酵素阻害因子SERPINB7の遺伝子変異が、この病気の原因であることを初めて明らかにしました。見つかった遺伝子変異を持つ人の頻度から、長島型掌蹠角化症の患者数は、日本で1万人以上、中国では数十万人と見積もられました。
 SERPINはほとんど全ての生物が持つ蛋白分解酵素阻害因子で、ヒトは36種類のSERPINを持つことが知られています。SERPINB7はその中の1つです。この研究成果によって、長島型掌蹠角化症の起こる仕組みの研究が進み、病気が起こる仕組みに基づいた新しい治療法開発の研究が進むことが期待されます。
 本研究成果は、2013年10月24日(日本時間10月25日)に、国際科学誌The American Journal of Human Geneticsのオンライン版に掲載されます。

1.研究の背景
 遺伝性掌蹠角化症(注1)には様々な種類があります。長島型掌蹠角化症は、乳児・幼児期から手の平と足の裏の皮膚が、赤みを伴って分厚く固くなってくる疾患です。しばしば手の平と足の裏の多汗を伴います。また、赤みは手の甲側、足の甲側、手首の内側、アキレス腱部にも広がります(図1)。1977年に慶應義塾大学医学部皮膚科の長島正治助教授(当時。後に杏林大学医学部皮膚科教授。2010年没)が初めて報告した疾患で、1989年に弘前大学医学部皮膚科の橋本功教授(当時)、三橋善比古講師(当時。現・東京医科大学皮膚科教授)により、最初の報告者の名前を冠して長島型掌蹠角化症と命名されました。日本人に本症の患者が多いことはわかっていましたが、病気の原因はこれまで全くわかっていませんでした。

2.研究の概要と成果
 研究チームは、慶應義塾大学病院、京都大学医学部附属病院、東京医科大学病院、東邦大学医療センター大森病院、国立成育医療研究センター病院、浜松医科大学医学部附属病院を受診され、長島型掌蹠角化症と診断された患者とその両親より血液を提供していただき、血液からゲノムDNAを抽出し、国立成育医療研究センター研究所にて次世代シーケンサー(注2)を用いたエクソームシーケンス(注3)、慶應義塾大学医学部にてゲノムインフォマティクス解析(注4)を行いました。患者3人のゲノムDNAを解析したところ、3人全員がSERPINB7の変異をホモ接合体(注5)、または複合ヘテロ接合体(注6)として持つことが明らかになりました(図2)。そこでさらに10人の患者のゲノムDNAを通常のシーケンス方法で解析したところ、10人全員がSERPINB7の変異のホモ接合体または複合ヘテロ接合体でした。以上より、この病気がSERPINB7の遺伝子変異により発症することが明らかになりました。
 日本では、皮膚科を掌蹠角化症で受診する患者の多くが長島型掌蹠角化症であることから、本症は日本人に多い病気であると予想されていました。そこで、見つかったSERPINB7の変異を1000人ゲノムプロジェクト(注7)のデータで検索してみたところ、c.796C>Tという変異を持つ保因者(注8)が、日本人89人のうち2人、中国人197人のうち6人に見つかりました。このことから、長島型掌蹠角化症はアジア人に多い遺伝病で、日本では1万人あたり1人以上(すなわち日本人全体で1万人以上)、中国では1万人あたり3人以上(すなわち中国人全体で数十万人)の患者がいると考えられました。この変異は、今回調べた13人の患者全員が少なくとも1つ持っていました。一方、1000人ゲノムプロジェクトで調べられた非アジア人806人には変異は見つかりませんでした。以上のことから、アジア人の祖先となった人々の中の1人に生じた、SERPINB7のc.796C>Tという突然変異が、アジア全体に広がったと考えられました。

 ※図1・2は、添付の関連資料を参照

3.研究の意義・今後の展開
 長島型掌蹠角化症はこれまで原因不明であったため、効果的な治療法がありませんでした。SERPINB7蛋白が蛋白質分解酵素阻害因子であることから、本症が皮膚における蛋白質分解酵素活性の過剰によって発症する可能性が示されました。この発見によって、長島型掌蹠角化症の病態解明が進むことが期待されます。また、SERPINB7と同様の蛋白質分解酵素阻害効果を持つ薬剤を開発し、その薬剤を塗り薬として使うことで本症を治療できるようになることが期待されます。

4.特記すべき事項
 本研究は、主に以下の事業・研究領域・研究課題によって遂行されました。
 ・文部科学省科学研究費補助金基盤研究(A)
 ・厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事業
  H22-免疫-一般-003、H23-実用化-(難病)-一般-003、H23-実用化-(難病)-一般-013、H23-難治-一般-028、H25-難治等(免)-一般-001
 ・成育医療研究開発費(24-5)

5.論文について
 【英文タイトル】
 “Mutations in SERPINB7,Encoding a Member of the Serine Protease Inhibitor Superfamily,Cause Nagashima-type Palmoplantar Keratosis”
 【タイトル和訳】
 「長島型掌蹠角化症の原因は、セリンプロテアーゼインヒビターをコードする遺伝子SERPINB7の変異である」
 【著者名】
 久保亮治、塩濱愛子、佐々木貴史、中林一彦、川崎洋、厚木徹、佐藤尚武、清水厚志、三上修治、谷崎英昭、内山真樹、前田龍郎、伊藤泰介、坂部純一、平家俊男、奥山虎之、小崎里華、小崎健次郎、工藤純、秦健一郎、梅澤明弘、戸倉新樹、石河晃、新関寛徳、椛島健治、三橋善比古、天谷雅行【掲載紙】
 2013年10月24日(日本時間10月25日)に、国際科学誌「The American Journal of Human Genetics」のオンライン版に掲載。

【共同研究施設】
 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室、同総合医科学研究センター、同遺伝子医学研究室、同分子生物学教室、同臨床遺伝学センター、同MSDアレルギー研究寄附講座;慶應義塾大学病院皮膚科、同病理診断部;国立成育医療研究センター研究所周産期病態研究部、同再生医療センター生殖・細胞医療研究部;国立成育医療研究センター病院皮膚科、同遺伝診療科、同臨床検査部;京都大学大学院医学研究科皮膚生命科学講座;京都大学医学部附属病院皮膚科、同遺伝子診療部;東京医科大学医学部皮膚科学教室;東京医科大学病院皮膚科;東邦大学医療センター大森病院皮膚科;浜松医科大学医学部医学科皮膚科学講座;浜松医科大学医学部附属病院皮膚科
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