慶應義塾大学医学部皮膚科学教室の久保亮治専任講師を中心とした、慶應義塾大学医学部・国立成育医療研究センターらの共同研究チームは、遺伝性掌蹠(しょうせき)角化症の1つである長島型掌蹠角化症の原因遺伝子変異が、SERPINB7の変異であることを突き止めました。
この病気は、乳児・幼児期から手の平・足の裏の皮膚が赤みをおびて分厚く固くなってくる病気です。1977年に日本人皮膚科医、長島正治により初めて報告され、現在では報告者の名前を冠して長島型掌蹠角化症と呼ばれています。これまで、この病気の原因は全くわかっていませんでした。
研究チームは次世代シーケンス技術を用いて、解析に協力していただいた長島型掌蹠角化症患者とその両親のゲノムDNAを解析し、蛋白分解酵素阻害因子SERPINB7の遺伝子変異が、この病気の原因であることを初めて明らかにしました。見つかった遺伝子変異を持つ人の頻度から、長島型掌蹠角化症の患者数は、日本で1万人以上、中国では数十万人と見積もられました。
SERPINはほとんど全ての生物が持つ蛋白分解酵素阻害因子で、ヒトは36種類のSERPINを持つことが知られています。SERPINB7はその中の1つです。この研究成果によって、長島型掌蹠角化症の起こる仕組みの研究が進み、病気が起こる仕組みに基づいた新しい治療法開発の研究が進むことが期待されます。
本研究成果は、2013年10月24日(日本時間10月25日)に、国際科学誌The American Journal of Human Geneticsのオンライン版に掲載されます。
5.論文について
【英文タイトル】
“Mutations in SERPINB7,Encoding a Member of the Serine Protease Inhibitor Superfamily,Cause Nagashima-type Palmoplantar Keratosis”
【タイトル和訳】
「長島型掌蹠角化症の原因は、セリンプロテアーゼインヒビターをコードする遺伝子SERPINB7の変異である」
【著者名】
久保亮治、塩濱愛子、佐々木貴史、中林一彦、川崎洋、厚木徹、佐藤尚武、清水厚志、三上修治、谷崎英昭、内山真樹、前田龍郎、伊藤泰介、坂部純一、平家俊男、奥山虎之、小崎里華、小崎健次郎、工藤純、秦健一郎、梅澤明弘、戸倉新樹、石河晃、新関寛徳、椛島健治、三橋善比古、天谷雅行【掲載紙】
2013年10月24日(日本時間10月25日)に、国際科学誌「The American Journal of Human Genetics」のオンライン版に掲載。